最後のメッセージ
拝啓 大泥棒様
君からの返信を待とうと思っていたのですが、なにぶん時間がないものでメッセージを送りました。
初めに、君に謝らなくてはならないことがあります。
わたしは最初、君をわたしにしようと思っていました。
君がわたしの小説を盗むと息巻いているのをいいことに、わたしの生きた証として、君を遺そうと思っていました。わたしの代わりとして、君を羽ばたかせたいと。
でも言った通り、わたしは君が、わたしになることを望んでいるんじゃないとわかっていました。わかっていながら、君をわたしに仕立てあげようとしました。狡いでしょう。罵ってくれて構いませんよ。はは。でも君がわたしに失望したと言ったとき、本気で凹みましたがね。
しかし君の小説を読んで、気が変わりました。君の小説はわたしのものとは別物で、そしてなかなか魅力的でした。
君は君のままがいい。
わたしは君の小説の、一人目のファンかもしれません。もちろん異論は認めませんよ。
君の小説を損なわせたくないと、強く思ったのです。
君はいつか、わたしを越える物凄い小説家になるでしょう。わたしの勘はあまり当たりませんが、これは勘ではなく直感なので大丈夫です。冗談ですよ、落ち着きなさい。
いつだったか、君は言いましたね。
“私の小説は完成に近づいている訳ではなく、その瞬間瞬間完成された小説です。”と。
そうでした。久しく忘れていましたが、どの小説も、それぞれ全力でしたし、どの作品も『わたし』が書いたものでした。
その頃からでしょうか。君はわたしと違うのだなと、若干の寂しさと共に思ったものです。
これでお別れになります。
今思えば、何も教えられやしなかった。もっと下らないことを言って、もっとなんでも教えてあげたかったのですよ。
君に会ってみたかった。どんな人なのだろうと想像を膨らませては楽しい気持ちになりました。いつも苛めてごめんね。
ケントウ ヲ イノル。
物書きより




