二、野生の動物にエサを与えないでください。
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心からお礼申し上げます。
※ 【第二試験】 キング・オオイノシシ、討伐。
はい。僕は今、五人の仲間とタカタカ森に来ています。
森の中はイノシシだらけでした。
キング・オオイノシシはどこにいるのでしょう?
あ、そうだ。ちなみに代理人は討伐の仲間として認められないので、エメリアさんはここに居ません。
そういうことで、リクさんはちゃんとチームの一員として参加してくれました。
ありがとうございます。
僕が礼を言うと、リクさんは素っ気無くこう言いました。
「貸し、一つだから」
酷すぎます、リクさん。
「で、どーするんや? ヨーイチ。片っ端から退治していくか?」
グランツェが攻撃態勢に入ります。
「待って。効率良くやっていこう」
僕は仲間に待ったをかけました。
今回みんなバラバラではなく、ちゃんと僕の指示を待ってくれています。
僕は緊張に胸を高ぶらせながら、作戦を言いました。
「みんなの力は確かに強い。でもいくら強くたって体力に限界がある。山岳イノシシや暴れイノシシを片っ端から相手にしていたら、いざキング・オオイノシシが出てきた時にチーム一丸となっての攻撃が難しくなる。だから、温存しながら効率良く戦おう」
なんか僕、今スゲーかっこいいことを言ったと思う。なぜならみんな、僕よりすごく強い人達だからだ。その人達が僕の作戦を素直に聞き入れてくれている。僕ってまるで勇者みたいだ。
「なるほどな」
クレイシスさんが感心してくれました。
「さすが勇者志願者やな、ヨーイチ」
グランツェまで。
リクさんが魔弾銃を手に行動を開始します。
「じゃぁ私はあの小高い山から援護する」
ラウル君が指の関節をパキパキ鳴らしながら先頭に進み出ます。
「じゃぁボクが右をやるね」
──え?
「じゃ俺は左な」
あ、あれ? ちょっと待って。
「左はオレだ、イカレ剣士。お前は右斜めを行け」
「右斜めってどこや! 左は譲らん! てめぇが右斜めに行けや!」
「早い者勝ちだ」
「なんやと!」
「ちょっと待って!」
僕はみんなを止めましたが、誰も聞いてくれません。
唯一残ったのはウララちゃんだけでした。それ以外は全員、敵に攻撃を始めています。
ウララちゃんが僕の手を握り締めて言いました。
「さぁ、行ってくださいヤマダさん」
「は?」
「雑魚はこちらで引き受けます。ヤマダさんは早く手持ちの誘いエサでキング・オオイノシシを見つけ出してください」
「ちょっと待って」
「あなたの勇気に感動しました。わたし達はあなたを援護します。だからヤマダさんは何も気にせず、キング・オオイノシシをここまで誘い出してください」
その言葉を残し、ウララちゃんも戦いを始めてしまいました。
勇者。それは勇気ある者。
僕はアイテム袋の中に入れていたキング・オオイノシシの誘いエサを取り出しました。
これから一人でキング・オオイノシシをここまで誘い出して来なければなりません。
でもこれって、絶対みんなやりたくなかったやつだよね?
これの係りになる人はジャンケンで平等に決めようって、そう決めていたはずだよね……?
上手い具合に押し付けられた気がする。
僕は泣きながら森の中を走った。
自らエサとなって。