二、バナナはおやつに入りません。
はい。僕は今仲間とともに、学校の相談室を貸しきって作戦会議を開いております。
議題はもちろん──
「バナナ……?」
ではありません。
どうすればキング・オオイノシシをおびき寄せられるかの話し合いです。
それなのに、リクさんの代理である彼女──エメリアさんが……
あぁ、紹介が遅れました。リクさんの代理人が来てくださいました。
初等部武器・防具製造科に所属していますエメリアさんです。朱髪をショートカットにし、活発で男まさりな方です。
製造の腕はよく知りません。
ですが、すごく面倒見が良くて、男女ともにとても人気のある方だというのは知っています。
そんな彼女が、突然こんなことを発言してきたんです。
「バナナはすごく栄養価の高い食べ物だと思っている」
「バナナはデザートだ」
と、クレイシスさんがなぜか真剣にそう反論しました。
クレイシスさんが話に乗ったことで、今度はグランツェまで話につられていきます。
「おい、魔法使い。お前何言ってるんや? バナナはご飯や」
それになぜかウララちゃんまで真剣に、
「そうですね。南国の方々はバナナを主食にすると聞きますし」
ラウル君まで、
「それじゃバナナはおやつ? それともご飯?」
僕はバンバンと黒板を叩いて話を戻すようみんなに言いました。
「今バナナ関係ないよね? この話し合いにバナナはすごく関係ないよね?」
「じゃ、お前はどう思うんだ? 山田洋一」
「え?」
クレイシスさんがバナナ話を振ってきました。
「ヨーイチもバナナはご飯だと思うよな?」
グランツェも振ってきます。
そしてなぜかウララちゃんが手を組んで、拝むように訴えてきます。
「勇者志願のヤマダさんがデザートと申されるなら、わたしはそれに従います」
「え? いや、何の話?」
キョドる僕の目の前にエメリアさんが近づいてきて、胸倉を掴み、脅迫してきました。
「お前の一言でこのバナナの命運は決まる」
と、手持ちのバナナを僕の頬にぐりぐりと押し付けてきました。
僕はバナナを指差して言いました。
「バナナだよね? これ、ただのバナナだよね? 関係ないよね? 第二試験にすごく関係ないよね?」
「ヨーイチ! バナナはご飯や!」
グランツェの言葉に、クレイシスさんが鼻で笑ってツッコミます。
「バナナはデザートだ」
「何やと、魔法使い!」
「もう一度言う。バナナはデザートだ」
「上等だ、てめぇ。外出ろや!」
「望むところだ」
大変です。クレイシスさんとグランツェの間でバナナ戦争が始まってしまいました。
僕はすぐに二人の間を割って、喧嘩を止めます。
「これってすごくどうでもいい喧嘩だよね? ただのバナナだよね? 第二試験に関係ないよね? なんでバナナの話だけでそんなに盛り上がれるの!」
「ヤマダ」
ドスのきいた声でエメリアさんが僕の肩を掴んできます。
恐る恐る振り返れば、すごく怖い形相でエメリアさんが僕のことを睨んでいました。バナナを片手に掲げて、
「男ならハッキリ決めろ。だからお前はヘタレなのだ」
「もうやめてください!」
ウララちゃんが僕をかばってエメリアさんの前に割り込んできました。
「これ以上ヤマダさんを責めるのなら、わたしがお相手します!」
と、魔法の杖を構えました。
──って、待ってウララちゃん。バナナだよね? これってすごくどーでもいいバナナの話だよね?
僕はラウル君に助けを求めようと目を向けました。
しかし、ラウル君はなぜか突然リコーダーを吹き始めました。
僕は苛立たしく頭を掻いて叫びました。
「もーいい! わかったよ! 僕が先生に訊いてくればいいんだろ!」
◆
と、いうわけで。
「先生。バナナを食料として討伐必需品に認めてください」
「ダメだ」
「ですよね」
バナナがデザートだろうとご飯だろうと、討伐には一切関係ないようです。