終、これが最後のお告げです。
僕とグランツェはある事情があって病院に来ていました。
病院内の廊下を歩きながら、僕はグランツェと話を続けます。
「クレイシスさんがパーティを抜ける?」
「そや。なんや突然カルロウ教師に言うてきたらしいんや」
「それで? なんで先生が入院なんか」
僕は話の流れからしてハッと気付きました。
まさか、クレイシスさんがカルロウ教師を──
「それは考え過ぎや、ヨーイチ」
ぽんとグランツェが僕の頭を軽く叩きます。
僕は尋ねました。
「じゃぁなんで先生は入院なんかしたのさ?」
「なんや話によると、カルロウ教師は『今日の弁当なにしよーかな?』なんて考え事しながら道を歩きよったら馬車にはねられたらしいんや」
「それ、クレイシスさん関係なくね?」
「問題はそこやない、ヨーイチ」
「え?」
僕とグランツェは足を止めて向き合いました。
「ええか、ヨーイチ。あのボケ魔法使いは俺等に何も言わず勝手にパーティを抜けるとカルロウ教師に言ったんや。
そこんとこ、どー思っとるんや? ヨーイチ」
「そ、そう言われても……」
僕は言葉に困って顔をうつむけ黙り込みました。
「とにかくや、ヨーイチ。お前がそこんとこの真相をカルロウ教師に直接聞いてこいや」
「え、ぼ、僕が?」
「当然やろ。お前、俺等のパーティの勇者やないんか?」
「わ、わかったよ。ちょっと先生に事情を聞いてくる」
僕はグランツェに待合室で待っているよう言って、先生の入院している病室へと向かいました。
先生の病室を確認し、ノックして扉を開ける。
「失礼します」
個室のベッドからカルロウ教師が僕を見て爽やかに手を振ります。
「お、山田。来たのか」
「先生……」
カルロウ教師の右足には大きなギプスがついていました。
「先生、大丈夫ですか?」
心配に僕が尋ねると、カルロウ教師は苦笑しました。
「まぁ見ての通りだ。問題ない。
それより山田、お前にお告げを用意したので聞いてほしい。──これが最後の進級試験だ」
僕はピンと何かを確信しました。
やはりそういうことか。クレイシスさんがカルロウ教師にパーティの脱退を申し出たことにより、それがそのまま僕の試験になるんだ。
第四試験のラウル君の一件もあり、僕はそう感じずにはいられませんでした。
このまま仲間を突き放すか、それともパーティに呼び戻すか。
勇者としての力量が問われる最後の試験。
カルロウ教師が重い口を開きます。
「では、最後の進級試験を告げる」
「はい。先生」
僕はごくりと唾を飲み込んだ。ぐっと拳を握って覚悟を決める。
カルロウ教師は真面目な顔になり、真っ直ぐに僕を見つめます。
だから僕も真っ直ぐに先生の目を見返した。
──先生。僕は必ずクレイシスさんをパーティに呼び戻してみせます。
緊張の一瞬。
カルロウ教師は言った。
「悪いが、お昼に買い損ねた『牛たま弁当』を買ってきてくれないか?」
「どーでもよくね? それ」