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アリサとトーコ


 ──ある日の放課後。


 学校の屋上で、二人の女生徒はひそひそと密会する。

 一人は紫紺色の髪を頭の上で二つ結びにした活発そうな少女。

 もう一人は長い黒髪を腰の辺りまで垂らした内気な少女。


 紫紺色の髪の少女は、怒りをにじませた顔で腕を組んで強い口調で言う。

「トーコ。今から言う質問に正直に答えて」

 ビクッと。怯え逃げるかのように、名を呼ばれた長い黒髪の少女──遠子トーコは身を震わせる。声を小さくして、

「……な、なんのことでしょうか? アリサさん」

「山田洋一にラブレターを送ったの、あんたね?」

 遠子は顔を逸らすようにして項垂れる。

「い、いえ、わたくしはただ──」

「ごまかしてもムダ」

 言い負かされ、やがて遠子は静かにこくりと頷く。

「呆れた」

 紫紺色の髪の少女──アリサは、額に手を当ててため息を吐き捨てた。

「山田はあたし達の敵だってこと、忘れたの?」

「わかっております。でも」

「『でも』も『山田』も『冷やし中華』もない!」

 つんつんつんつんと、アリサは遠子の額を人差し指で何度も突く。

「あんたはそばを食いに来たのよ、そばを! 予定にないメニューがぶら下がっていたとしても目移りしない! いい? わかった?」

「は、はい。わかりましたアリサさん。ごめんなさい、あの、もう、痛いです」

「まったくもう! どうせまたお得意の水晶玉を通して誰かの心に感情移入でもしたんでしょ?」

「お、おっしゃる通りです、はい」

「計画は完璧に遂行。やっとここまで上手く変装してもぐりこんだというのに、こんなところでアイツに逃げられたら元も子もないわ」

「魔王様からせっかくいただいた出世のチャンスですものね、アリサさん」

「しっ!」

 アリサは遠子の口を手でふさぐ。

「こんなとこで魔王様のことを口に出しちゃダメ。ここは敵がうようよしているダンジョンの中なのよ」

「うぐうぐ」

「正体がバレたらその時点であたし達の命は終わり。いい? わかった? トーコ」

 遠子はこくこくと頷く。

「よし」

 アリサは遠子の口から手を退け、代わりに手をつないで一緒に教室へと戻る。

「行くよ、トーコ。計画を遂行しないと仲間のとこには帰れないんだからね」

「あ、あの、アリサさん」

「まずは山田洋一。奴から先にどうにかしないとね」



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