終、僕に恋は似合いません。
「ヤマダさん。ラブレターをもらったって本当ですか?」
ウララちゃんが血相を変えて僕の教室にやってきたのは、クレイシスさんからピンクの封筒を受け取ってしばらくのことでした。
ウララちゃんの言葉にクラス中が一瞬にしてどよめきました。
いきなりだったので、僕の声が動揺に震えます。
「な、なな、なんで? ま、まだ開けてないからそんなのわかんないよ。ってかウララちゃん、それ誰から聞いたの?」
「やっぱりそうなんですね」
ウララちゃんは落胆に肩を落としてため息を吐きました。
クラスメイトの何人かが「大ニュースだ」と教室を飛び出して行きます。
僕は慌てました。
「ま、待って! もし違ってたらすげー恥ずかしいじゃん、僕!」
「じゃぁ今ここで開けて下さい」
「え?」
「もらったんですよね? ラブレター」
「ま、まだラブレターと決まったわけじゃ……」
僕は呟くようにそう言って、机の引き出しに隠していたピンクの封筒を取り出しました。
みんなが息を飲んで見守る中、僕は恐る恐る封を切ります。
中には一枚の手紙が入っていました。
僕はその手紙を取り出し、目を通します。
手紙にはこう書かれていました。
『中華麺のようなヤマダ様が好きです』
意味わかんねーよッ!
ウララちゃんの目が怪しく光ります。
「好き……」
「なんでそこだけ切り取るの!? ウララちゃん!」
教室中がさらに騒がしくなってきました。
僕は慌てて説明しようとしますが、もはや誰も聞いてはくれません。
ウララちゃんが怒りに拳を震わせます。
「やっぱりアリサちゃんもヤマダさんのことが好きだったんですね」
「アリサちゃんって誰!?」
「私と同じ召喚科の同級生です。ずっと怪しいと思っていたんです。夜な夜なヤマダさんのわら人形を作っては木に打ち付けていましたから」
「それ絶対恋じゃないよ! ってか、なんで僕そんなに恨まれてんの!?」
「ヤマダさん。私、今からアリサちゃんに勝負を挑んできます」
その後ウララちゃんは本当にアリサちゃんに勝負を挑みに行って、アリサちゃんが僕に対する恨みを増幅させたのは言うまでもありません。