終、僕は仲間を信じます。
──それは第四試験を終えた、ある日の夜。
僕が学校の寮にある勉強室で一人、机に向かって勉強していた時のことでした。
そこにグランツェが黙って入ってきて、何か言いたげに僕をじっと見ています。
「……」
どうしたのだろう。いつもとなんだか様子が違います。
いつものグランツェはいきなりハイ・テンションに入ってきて『オセロやろや』と言って勉強の邪魔をするのですが、今日はどんより曇り空のようなネガティブになっています。
いつものグランツェらしくありません。
なにやらすごく思い悩んでいるようです。
相談なのでしょうか?
僕は勉強の手を止め、グランツェに尋ねます。
「もしかして今からオセロやろうとか、そんなんじゃないよね?」
「ヨーイチ」
重く、なにやら言いにくそうにグランツェは僕の名を呼びます。
僕も思わず真剣になって答えます。
「なに?」
「第四試験、もう一度やり直そうや」
「は? なんで?」
「ラウルの件でわかったんや。このパーティ、なんか変や」
僕は語気を荒げて怒ります。
「グランツェ!」
「わかっとる。でもこのまま進級しても納得がいかんのや。お前は納得できるんか? ヨーイチ」
「……」
なんとなく、グランツェの言いたい事はわかります。彼なりに僕のことを心配してくれているんだと思います。昔からそういう奴なんです。
このまま進級すれば、今のこのパーティで本格的に魔王退治の冒険に旅立つことになります。
試験内容もランクアップし、長期的な旅も覚悟しなければなりません。
そうなれば自然と仲間の戦闘配置も決まってくるし、信頼関係もより深くなっていきます。
「ヨーイチ。第四試験、もう一度やり直そうや」
やり直すことは可能です。ただ──
「どーしても気になるんや。あの魔法使いと銃使いの兄妹がお前のことを裏切りそうで」
「裏切らないよ。クレイシスさんもリクさんも、そんな人じゃない」
「そやけど」
「じゃぁわかった。やり直そう、もう一度。第四試験を」
仲間を試すとか、そんなんじゃなくて。
「僕はこの第四試験を新たなる冒険の始まりにしようと思う」