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四、いいかげんにしろよ、コラ!


 はい。僕達は今、待ち合わせ場所である【パントテン町の三番街停留所】に来ています。

 意外に学校のすぐ近くです。

 今回はイリア嬢の護衛ということで、みんなすぐに集まってくれました。


「──って、なんか仲間が増えてね?」


 何の怪奇現象が起こったのでしょうか。

 僕は目をこすって、もう一度指で人数を確認してみます。

 クレイシスさん、グランツェ、ウララちゃん、リクさん、それと──

「なんで居るの?」

 僕は第三試験で出会った貴族勇者と白魔法使いの人に尋ねました。

 貴族勇者がお手上げして僕に言います。

「Why? なぜそんなことを聞く? 僕ちんは君達の仲間じゃないか」

「俺たちを仲間にしたのはお前だ、新人勇者ルーキーヤマダ」

 え? まさかあのオセロゲームの呪いはまだ続いていたんですか?

 僕はクレイシスさんに視線を向けます。

 するとクレイシスさんは肩をすくめてお手上げしました。

「あのゲームなら昨日リサイクルショップに売った」

 そんな危険な物を市場に流さないでください。

「魔法の効力も切れていたしな。ただのゲームに成り果てたから問題ない」

 僕たちには問題大有りです、クレイシスさん。

 ウララちゃんが僕に言います。

「いいじゃないですか、ヤマダさん。仲間はたくさんいた方が楽しいですよ」

「そや、ヨーイチ。このままでええやんか」

 しかし、リクさんだけが僕に魔弾銃を突きつけて怖い顔で言います。

「一つのパーティに勇者は二人もいらない」

「えええっ!」

 僕は慌てました。

 貴族勇者が割って入ります。

「僕ちんの為に争わないでくれよ。僕ちんはみんなの物だ」

「黙れ、お前。黒魔法を全力でぶち込むぞ」

「落ち着けや、魔法使い」

 貴族勇者に殺気向けるクレイシスさんをグランツェが慌てて止めます。

 すると白魔法使いの人がクレイシスさんの前に立ちふさがりました。喧嘩腰で指の関節を鳴らしながら、

「そういえば魔法使いも一つのパーティに二人いらないな。特に黒魔道師、貴様は論外だ」

「上等だ。ここでケリをつけよう」

「まぁまぁ落ち着けや、魔法使……魔法使いのお二人さん」

 グランツェの一言が、さらに二人の闘志をあおります。

 ウララちゃんが泣きそうになって、

「もう喧嘩は止めて下さい! 私、私……」

 語尾を涙でくもらせて、ウララちゃんはとうとう泣きだしてしまいました。

 リクさんが銃口を下ろして、僕に指を突きつけてきます。

「お前が泣かせた」

「え! なんで僕!?」

 唖然とする僕の隣で、貴族勇者が独り舞台を踊ります。

「あぁ泣かないでくれ、子猫ちゃん。僕ちんはみんなの物だ」

「勝負は三分といこう。問題あるか? 黒魔道師」

「ない。一秒で終わらせる」

「白も黒も喧嘩すんなや。魔法使いは二人でええやろ?」

 クレイシスさんがグランツェにきっぱりと言い放ちます。

「オレは黒魔法が使える白魔法使いだ。白魔法使いは一つのパーティに二人もいらない」

 白魔法使いの人も頷きます。

「そうだ。二人もいらない」

 グランツェが雰囲気に圧されて身を引きます。

「ほんなら存分に戦えや。二人とも」

 それを合図に二人の魔法使いは白魔法を手中に出現させました。

「回復魔法で勝負だ、黒魔道師!」

「望むところだ!」

 二人同時に魔法を放ち、お互いに回復魔法をかけ合います。

 グランツェが頬を引きつらせて、ぼそりと。

「アホや、アイツ等……」

 そんな彼らをよそに、僕は貴族勇者にこのパーティから脱退してもらうよう申し出ました。

「たしかにリクさんの言う通り、パーティに勇者は二人もいらない。これ以上は喧嘩の原因にもなるし、できれば──」

 貴族勇者がきょとんとした顔で首を傾げます。

「僕ちんは勇者を名乗るつもりはないよ」

「え?」

 そう告げると、貴族勇者は腰に装備していた剣を抜き放ちます。剣の刃に軽くキスをし、

「僕ちんの得意技は剣の舞。だから僕ちんは剣士を名乗るよ」

「上等や、コラ!」

 グランツェが大剣を抜き放って構えます。

「わぁぁ! 待ってグランツェ!」

 僕は慌ててグランツェを止めに入ります。

 このままではパーティ崩壊どころか依頼人に迷惑をかけてしまう。依頼人はあのアップリナ大公の娘だ。こんな雰囲気を見せて『頼りない』と思われたら、噂が広まって今後一切どこからも依頼がもらえなくなる。

 僕は決死の覚悟に出ました。

「みんな、とりあえず落ち着いて! 僕の話を聞いて!」

 喧嘩は止まり、みんなが僕に注目します。

 僕は言いました。

「こうしよう。僕達は小規模パーティを組んだ。みんなで協力し合って一つの依頼を達成させるんだ。これならいがみ合う理由なんてないはずだろう?」

 みんなが僕の意見に納得します。

 争いが収まり、パーティは再び穏やかな雰囲気を取り戻しました。

 ──うん、これでよし。

 なんか今日の僕はすごく輝いている。

 するとリクさんが、また僕に指を突きつけ言いました。

「パーティに弱者はいらない」


 以下、振り出しに戻る。


「…………」

 僕はがく然と地面にひざを折って項垂れました。

 もういいかげんにしてくれ。


 そんな時でした。

 一台の大型馬車が僕達の前で停車しました。

 

 

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