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四、じゅげむ・じゅげむ……。


 クレイシスさんが珍しく、僕の教室にやってきました。

「ヤマダ。ちょっと来い」

 何かあったのでしょうか。

 僕は理由もわからず廊下に呼び出され、クレイシスさんと向き合います。

「第四試験はまだですけど」

「わかっている。リクからお前に渡すよう頼まれたんだ」

 そう言って、クレイシスさんは僕にピンクの封筒を渡してきました。

 僕はドキドキしながらその封筒を受け取ります。

 え? これってもしかしてラブ・レ──

「勘違いするな。お前が弟になるなどあり得ないし、考えたくもない」

 どんな全力否定ですか? それ。

「リクも頼まれたんだ。『ヤマダに渡してくれ』とな。だがこの手紙を魔弾とともにヤマダに送ったところで」

 なんで魔弾もセットなんですか?

「眉間でしか受け止められないだろうからと」

 なんで撃ち込み限定なんですか?

「オレがお前にこの手紙を渡すことになったんだ。だからオレの妹に好意を抱くのはやめろ」

「どういう流れでそうなるんですか?」

 急にクレイシスさんが考え始めました。顎に手を当てぶつぶつと呟きます。

「そういえばこの手紙、ものすごく人伝いで流れてきているな」

「え? これ、誰からどのようにココに流れてきているんですか?」


「リクは武器防具のエメリアからこの手紙を頼まれたんだが、エメリアはスペクタルという男子生徒から頼まれて受け取った。だがスペクタルはアルゲルマという男子生徒から『コイツ知らないか?』と受けて、アルゲルマはイリンダという元カノからこの手紙を預かって、イリンダはハルカという女子生徒からこの手紙を受け取って、そのハルカという女子生徒はイトウという男子生徒からこの手紙を受け取って、そのイトウはアセルスという男友達から受け取って、アセルスはファムという男友達から──」


「もういいです。クレイシスさん」

「結論でいえば『コイツ誰?』だ」

 どんだけ影薄いんですか、僕は。


 そんな時でした。


「おー、ヨーイチ。こんなとこで何してんのや?」

 グランツェが廊下の向こうからやってきました。

 すぐにグランツェの視線がクレイシスさんへと流れます。

「何してんのや? 魔道師」

 クレイシスさんが素っ気無く答えます。

「正確に言えば元・魔道師だ。だからいつものように魔法使いでいい」

「どーでもええやろ。こんなところで何してんのや? 魔法使い」

 はぁ。

 クレイシスさんが疲れたようにため息を吐いて答えます。

「また一からあの流れを説明しないといけないのか」

「なんのことや?」

「結論を言えば『リクエメリアスペクタル、アルゲルマ、イリンダハルカ、イトウアセルスファム──」

「何の呪文や? 魔法使い」

「ヤマダ。説明してやれ」

「え? なんで僕が?」



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