一、どんだけヤル気ねぇんだよ
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※ 【第一試験】 水色スライム三十匹、討伐。
実習先であるサラク平原へ馬鹿真面目に集合したのは、なぜか僕だけだった。
担任の男性教師──カルロウ氏は驚かなかった。平然とした顔で、持っていたバインダーに目を落とし、スラスラと何かを書いていく。
「山田洋一。第一チェック合格だな」
「あの、先生。僕の仲間が誰も来てくれません」
「そりゃそうだろう。お前は勇者志願者だからな」
「先生、言っている意味がよくわかりません」
「何を言っている。勇者が旅立つ時は必ず一人だ。見習いの剣は持ったか? 旅立ちの服は忘れずに装着したか?」
何かを誤魔化された気がした。
「あの……先生。すでに敵が僕の目の前にいるんですけど……」
「攻撃をしない限り、奴らも襲ってこないから安心しろ」
「安心している場合じゃないと思います。僕一人で三十匹なんて体力が持ちません」
「ほぉ」
カルロウ氏が感嘆の声を漏らす。
「つまり仲間が必要だと言うんだな?」
「当然です」
いったい何の為にチーム編成なんかしたんだろう、と思いたくなる。
カルロウ氏は再びサラサラとメモし始めた。
「山田洋一、第二チェック合格だな」
「どんだけ回りくどいんですか? この試験」
「チェック項目は以上だ。さて、次は仲間を冒険に誘って、いよいよ魔物退治だ」
「先生。昨日僕が仲間に渡した連絡プリントに、何か意味はあったんでしょうか?」
「ない。元々あいつ等がプリント一枚で集まるとは到底思えなかったしな」
「彼らにやる気はあるのでしょうか?」
僕がそう問うと、カルロウ氏はにこりと笑った。
「それをやる気にさせるのが勇者見習い──山田洋一。君の役目だ」
「先生。それって単なる個々のモラルの問題だと思います」