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三、なぜか僕には敵が居ない。


 貴族勇者は髪を爽やかにかき上げて言ってきた。

「やれやれ。どうやらボクちんも戦わなければいけない雰囲気になったようだね」

 面倒くさいと言わんばかりにため息を吐く。


 向こうが出るなら僕も負けてはいられません。

 僕は立ち上がり、見習いの剣を構えました。

「面倒くさいのは僕も一緒だ」


 貴族勇者は馬鹿にするように笑った。高級そうなロングソードを抜き放ち、その剣先を僕に向けて言う。

「面倒くさいだって? 見習い勇者はよく吠える。負け犬の遠吠えってやつかい?」


 なんかほんと、心の底から面倒くさい相手です。

 すると僕をかばうような形でグランツェが大剣を抜き放って前に進み出てきました。剣先をカッコ良く、貴族勇者に突きつけて言います。

「そういうのは俺らのような雑魚を倒してから言うんやな」

 仲間想いのそのセリフ、感動ものです。

 しかし──。

「ヨーイチの実力なめんなや。こう見えてもこのチーム最強の実力を秘めてんやからな」

 はい、脅しはその辺でストップです。

 するとウララちゃんも僕の前に立ちふさがり、

「そうです。ヤマダさんを馬鹿にするなら私たちが相手になります」

 あのぉ~、ウララちゃん……。

 ラウル君も挙手をして、

「あ、じゃぁボクも」

 ノリで参戦するのは止めてください。

 次いでリクさんも魔弾銃を手に進み出る。

「なんだか面白そうね」

 え? 今、面白そうって言ったよね? 完全にノリの勢いだよね? それ。

 クレイシスさんがトドメの一言。

「弱者に用は無い。去れ」

 ちょっと待て! それだと完全に無敵キャラ状態だよ、僕! 負けられない雰囲気になってんじゃん!


 貴族勇者の表情が一変します。

「弱者かどうかは戦ってから言ってもらいたいものだね」

 敵の白魔法使いと貴族勇者が戦闘態勢に入りました。 


 こちらも、僕を除く全員が戦闘態勢に入ります。

 ──って。

「何もできないじゃん、僕!」

「ヤマダ」

 クレイシスさんに呼ばれ、僕は顔を向けます。

「勇者なら仲間を信じるべきだ」

「そや。コイツの言う通りや、ヨーイチ」

「私たちが全力でカバーします。安心してください、ヤマダさん」

「あとで二十人前の弁当おごってね、ヤマダ君」

「貸し、一つだから」

「みんな……」

 後半は違う意味で泣けてきます。

 クレイシスさんが僕にラッピングの箱を手渡してきました。

 あ。これはあの時クレイシスさんが駅で買ったオセロゲーム……。だけどなぜ今?

「それをお前にやる」

「え?」

 いやあの、これゲームなんですけど。ただのゲームなんですけど。

「お前はそれで存分に戦え」

 何気に戦力外通告していませんか? クレイシスさん。



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