三、旅立ち前の説明書
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心からお礼申し上げます。
冒険に旅立つ時、今どきの勇者御一行はバスや汽車を使って現場に行きます。
なぜならその方が安全だし、なにより現場に到着するのが早いからです。
駅のホームで一人静かに汽車を待つ僕に、カルロウ教師はこう言いました。
「またお前一人か、山田洋一」
僕はビシッと手を挙げて発言します。
「はい、先生」
「どうした? 山田」
「公共機関を使って冒険するって、何か間違ってないですか?」
「良い質問だ、山田。世の中にはな、モンスター・ペアレンツという脅威の魔物が存在する。学校の先生たちでも倒せない危険な魔物だ。
より安全で安心な冒険をさせないとモン・ペアが学校を襲撃に来るんだよ」
「それ聞いて、なんだかゴブリンを一人で倒せそうな気がしてきました」
「ははは。何を言っている山田。安心していいのは道中だけだ。そこから先は自己責任だから気をつけろ」
「先生こそ、モン・ペアの災害に気をつけてくださいね」
「面白いこと言うじゃないか、山田。だからお前はいつまで経っても勇者志願者なんだ。たまには一人でカッコ良く逝ってこい」
「先生。言葉の中に誤変換があります」
「気にするな」
そう言って、カルロウ教師は右手首に視線を落とすと腕時計を確認しました。
「ところで山田。そろそろ本気で仲間を集めに行かないと汽車が出るぞ」
僕は拳を固め、怒りを押し殺しつつ答えます。
「わかっています」
「まぁ、仲間を集めるのは勇者の旅立ちの基本だからな」
「モラルの問題です。先生」