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三、それってどうでもよくね?


 第三試験の前にお決まりの作戦会議です。

「──って、あの……エメリアさん?」

「なんだ? ヤマダ」

「どうして僕が席に着かなければならないんでしょうか?」

「試験で大事なのはチームワーク。チームは揃ってなんぼのもの。席が後ろになったからと言って文句言わない」

 席が後ろはどうでもいい。

「あの、僕は勇者なんですけど。勇者はチームのリーダーであって、そのリーダーが司会進行を──」

 ぷーぴー。

 僕の隣でリコーダーの音が聞こえてきます。

 目を向ければ、いつの間にかラウル君が隣の席に座っていました。

 ぷーぴー。

 しかも音程が微妙に変です。

「そんなことよりヨーイチ。オセロや、オセロ。オセロしようや」

 僕の前の席に座っていたグランツェが突然満面の笑みで振り返ってきます。

 僕は戸惑いました。

「そんなことって……。今ゲームやっている場合じゃないよね?」

「ヨーイチ、お前。そんなこと言うて、このまま勝ち逃げする気やな?」

 あー。まだ気にしてたんだ、あのこと。

 そういえば昨夜、グランツェが僕の部屋に押し入ってきて『暇やからゲームしよや。やる言うまで帰らんからな』と駄々こねてきたので相手をしてあげたことを思い出しました。

 結果は何度やっても僕の圧勝。

「わ、わかったよ。でも今は作戦会議中だし……とりあえずゲームは学校が終わってからにしよう」

「嫌や」

 笑顔で全力拒否されてしまいました。

 そういえばグランツェは昔からとても負けず嫌いな性格だったことを思い出しました。

「で、でもさグランツェ。よく考えてごらんよ。げ、ゲームしようにもマス目も何もないじゃん」

 すると遠く離れた席に座っていたウララちゃんが急に立ち上がって、とてとてと僕の側に駆け寄ってきました。

「ヤマダさん。私、ヤマダさんの為なら舞台を作ることだっていといません」

「ちょっと待って。舞台って何のこと?」

「私がこの世界にマス目の舞台を召喚します」

「いや、本気で待って。急にスケールでかくなったよね? 世界規模でゲームやっちゃうと、ある意味勇者じゃなくて魔王って呼ばれるようになるから、僕」

 離れた席でクレイシスさんが鼻で笑います。

「オセロで世界征服も悪くない」

 却下します。

 僕はバンバンと机を叩いて話を戻しました。

「オセロとか世界征服とか作戦会議に関係ないよね? 今重要なのはゴブリンをみんなで倒す方法だよね?」

「お前が仕切るな、ヤマダ」

 ぱこーん、と。黒板消しが僕の顔にクリーンヒットしました。

 投げたのはもちろんエメリアさんです。

 こほんと咳払いして、エメリアさんは議題を進めました。

「今重要なのはゴブリン退治ではなく、どうすれば憧れの人にチョコを渡すことができるかだ。

 バレンタインデーとは女子が男子に想いを届ける大切な日だ。

 それなのに学校はチョコの持ち込みを禁止としている。

 そこで女子を代表して言おう。

 チョコはおやつか否か?」

 

 チョコがおやつだろうとそうでなかろうと、非モテの僕にはどーでもいいことですけどね!  

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