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追放聖女の薬草店~光らない無能と言われた私の治癒力は、最強騎士団長の呪いにだけ効くようです。辺境で始める溺愛スローライフ~  作者: 黒崎隼人


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番外編「看板リスと不器用店員の奮闘記」

 平和が戻ったフォレスト薬草店は、以前にも増して大盛況だった。


「花を咲かせる魔法使い」と「竜さえ倒す黒騎士」の噂は尾ひれがついて広まり、隣の領地からも客が来るほどだ。


「いらっしゃいませ!」


 私がカウンターで薬を包んでいる間、ゼフィルは接客担当として奮闘していた。


 かつての騎士団長姿ではなく、清潔なシャツにサロンエプロンという、なんとも家庭的な姿である。


 ただ、その目つきの鋭さだけはどうにもならないらしく……。


「……何用だ」


「ひっ! か、風邪薬を……」


「そうか。症状は。熱はあるか。咳は」


 まるで尋問である。


 客のお婆さんは震え上がっている。


 これはいけない。私が助け舟を出そうとした時、救世主が現れた。


「キュイッ!」


 棚の上からポポが飛び降り、お婆さんの肩にストンと着地したのだ。


 ふわふわの尻尾で頬を撫で、手には小さな木の実を持っている。


 プレゼントのつもりらしい。


「あらまぁ! 可愛いリスちゃんねぇ」


「こいつはポポだ。……そちらの肩が凝っているようだから、揉んでやれと言っている」


「あらそうなのかい? 偉いねぇ」


 ゼフィルの苦し紛れの通訳(?)に、お婆さんの顔がほころぶ。


 ポポとお婆さんが戯れている間に、ゼフィルは手早く風邪薬を用意し、無骨な手つきで、しかし丁寧に手渡した。


「お大事に。……温かくして寝ろ」


「ありがとうねぇ。強面だけど、優しいお兄さんだね」


 お婆さんはニコニコして帰っていった。


 ゼフィルが大きなため息をつく。


「……接客というのは、剣を振るうより難しいな」


「ふふ、でも随分上手になりましたよ。ポポとの連携もバッチリですね」


 私が褒めると、彼は照れくさそうに鼻をかいた。


 ポポは誇らしげに胸を張って、ご褒美のドライフルーツを要求している。


「まったく、調子のいいネズミだ」


「リスですよ」


「どっちでもいい。……ほら、食え」


 ゼフィルが大きな手のひらにドライフルーツを乗せると、ポポは嬉しそうに頬袋に詰め込んだ。


 そんな二人(一人と一匹)のやり取りを見ているだけで、心がほっこりと温かくなる。


 店の中には、今日も穏やかで優しい時間が流れていた。

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