3 深海の魔女
扉により吹き飛ばされたレオーネ様。僕はレオーネ様からの拘束から開放され、扉が飛んで来た方向へと顔を向けた。
そこに居たのは一人の女性。
いや、魔女だった。
魔女ランキング2位。深海の魔女。
アデーレ・アーライト
アデーレは怒りの形相で身体からは魔力の光が漏れていた。それは、先ほど僕を抑え込んでいたレオーネ様より遥かに多い量で今にも魔法へと昇華しそうであった。
僕はアデーレを落ち着かせようと声をかけようとした…
瞬間。
「おいおい!随分なぁご挨拶じゃねぇーの?」
扉に吹き飛ばされたはずのレオーネ様が大声ト共に立ち上がっていた。そんなレオーネ様の前には扉であったであろう灰が床へと飛散していた。
アデーレ同様、レオーネ様の身体からも。今にも魔法へと昇華しそうな程の魔力光が漏れていた。
2人共が臨戦体勢。
僕はどうにか2人を落ち着かせようと口を開こうとするが、
「ハッ!放火魔風情に大した挨拶なんていらないでしょ!今からここから立ち去るなら見逃したあげる。濡れ雑巾になる前に帰りなさい」
アデーレが挑発する。
それに応える様にレオーネ様が好戦的な笑みを浮かべた。
「良いぜ!魚女、テメェをボコしてレンと専属契約を結んでやるよ。次いでにお前の専属契約は破棄させてやる!」
一触即発、そんな状況。
僕は覚悟を決めてアデーレの前へと出る。
「アデーレ、ダメだ!」
アデーレは僕に驚き、魔法の発動を止める。
アデーレの周りには水球が数個浮かんだ状態ではあるが、それをレオーネ様へと放とうとはしない。
「レン退いて!」
「いーや退かない!このまま僕が退けば、アデーレは魔法をレオーネ様へと放つでしょ?」
「当たり前でしょ!アイツはレンに酷い事をしようとしたのよ?罰は与えないといけない」
アデーレの強い言葉に僕は少し嬉しくなる。
だけど、
「アデーレ、それはダメだよ。魔女ランキングが下がってしまう」
「そんなのどうでもいい」
アデーレの言葉は強がりでもない本心。それは今アデーレと向き合っている僕が理解できる。
「それだけじゃない。このままだと、アデーレもレオーネ様も怪我をする。それを僕は望まない」
僕の言葉にアデーレは一瞬大きく目を開くが、それでも魔法を消そうとはしない。だから、僕は言葉を続ける。アデーレが納得してくれるまで。
「僕は大丈夫だから。アデーレが助けに来てくれたから傷一つ無いよ?」
大きく手を広げて、無傷だと証明する。
「それに、アデーレがここに来た以上、レオーネ様もこれ以上の暴挙は出来ない、でしょ?」
僕は言葉と共にレオーネ様へと振り向いた。
僕の言葉の意図を理解しながらも、レオーネ様は挑発的な笑みと言葉を口にする。
「どーだろうなぁ?私はアデーレが居てもお前を私のモノにするかもなぁ?」
レオーネ様が好戦的な性格なのは知っていたがここまでとは。
僕は少し悩みアデーレを見た。
アデーレは先ほどよりかは剣呑な雰囲気を抑えているが、何かあれば交戦を辞さない様に見えた。
僕は悩み、最終手段を使う事にした。
「わかりました。レオーネ様がここで引かないなら、僕は今後レオーネ様の施術はしません」
「ほーう?」
レオーネ様は僕の言葉に興味深そうに耳を傾ける。
「レオーネ様は整魔師できる人が見つかってないから僕に魔女協会を通して依頼をしてきた。でも、僕が今後それを断れば、貴方はいずれ魔力不全を起こします。それが戦闘中だったら命にも関わるでしょう。選んでください。今大人しく帰るか、2度目」と僕からの施術が受けられなくなるか」
レオーネ様は好戦的な性格。それは他の魔女やモンスターに対しても同じ。なら、現段階で施術ができる僕を逃すのは惜しいはず。
「それは困るな。だけどよぉ?ここでお前を私のモノにすればいいだけじゃないのか!」
瞬間。
レオーネ様から魔法が放たれた。
人を焼き尽くす事が容易な炎の球。
動けない僕をアデーレは引っ張り、懐へと庇う様に引き込んだ。
先ほどまで感じていた熱が引き、代わりにひんやりとした空気が頬を滑る。
人を呑み込むほどの火球と分厚い水の壁が競り合いをしていた。




