22話:怪獣ナマヅメ出現!広がる暗雲の理由は?
「ザクロ!出撃だ!!」
突然の出撃命令。
アカバチの時は予告があったから毎回予告が来ると思ってたけど、そうでも無いようだ。
遊んでたゲームはムービーシーンに入ってたけど、ぬぐぐ……人の命より優先はできない。
コントローラーを机に置き、電源付けっぱで放置。
窓をガラッと開けると、強い日光が目を刺激した。
外の空気は冷たいが、爽やかだ。
パアッと私の身体が光る。
意味もなく拳を突き出し、空へ向かって勝手に飛び立つ。
天気は暗く、灰色に塗り込められている。
雨雲が、モヤモヤと広がって太陽をさえぎっていた。
それらを突き抜けて、目標は、大気圏の境目に留まっているタカマガモリ。
その内部に着くまでにスーツの着用は済んでいる。
ピッチリとしたパイロットスーツ。
ギユッと身体が引き締まるが、いつもながら窮屈さを感じない。
タカマガモリ内部に着いた。
六畳ほどの広さの空間。
その中央前面にある私の席に勢いよく座る。
席に付いてる挿入口に手足を突っ込み、点呼を取る。
「ザクロ、準備よし!」
「おう!」
それに応じてミタマが声を張りながらうなづき、イナバくんに命令をくだす。
「タカマガモリ、発進!」
「了解!」
機体内のモニタに映る地球がどんどん近づいてくる。
地球──日本──関東──東京──地面。
一瞬、身体から重力が抜けて、また戻る。
タカマガモリの浮力機が発動したんだ。
それによって巨大な機体が、柔らかく着地して大地に立つ。
ここまでが、スーパーロボット『タカマガモリ』の発進シークエンスだ。
「スムーズに出撃できるようになったな」
「物覚えいいねえ、ザクちゃん」
二人が私を褒めてくれた。
私は黙ってペコと頭を下げて返事する。
褒められるのはやっぱり慣れてない。
……いや、そもそもそれ以前に、私は同僚から褒められるのが好きではないのかもしれない。
なんかこう……上から目線を感じるというか……。
同じ目線にいないというか……。
それに、こんな事でいい気になってもいられない。
大事なのは敵に勝てるかどうかだ。
「敵は?何分後?」
私はモニタの映像も見ずに、背後の席に座るミタマに聞く。
「もう来ている」
!
距離にして機体10体分ほどの場所。
正面を見ると、たしかにいる。
黒い毛に覆われたデカい生物が。
……二足歩行の哺乳類、というのが第一印象。
首や肩が無いのか、頭頂部から手先までが1つの曲線になっている。
その手先からは鋭利な爪。
金属特有のギラリとした光沢を放っている。
太腿はムキっとしているが、足の先は細い。
角ばった足先は、おそらく蹄だろうか?
シカやヤギを彷彿とさせる。
顔の周りは白く、目元には黒い模様がついている。
犬のような黒く大きな鼻。
黒く輝く眼。
どことなく人に近い顔立ち。
……思い出した、ナマケモノに近い顔だ。
「鋭い爪の、ナマケモノ……」
「それじゃ、個体名は『ナマヅメ』だね!」
……まあ、それでいいか。
『ナマヅメ』の体長は、タカマガモリより少しだけ低めだろうか。
一切揺れもせず、ビタリと立っている。
……周囲を見渡すと、今まで怪獣と闘った場所ではないことに気づく。
まだ破壊されてない建築が多い。
けど、破壊されたビルから火と煙がモウモウとあがっている。
さっきまで電気かガスが使われていた証拠だ。
避難自体は完了してるみたいだけど、緊急避難サイレンの音が遠く聞こえてくる。
胸の痛くなる音だ。
アカバチの時は事前に出現日時と場所が予告されていたけど、毎回そうなるわけじゃないってことか。
なら、サッサとケリつけなきゃ!
被害がこれ以上広がる前に!
軽く尻を上げ、背筋をピンと伸ばす。
「イナバくん、テラス因子の調子は!?」
「良好だよ!以前より高めの量をキープ!安定感もある!」
「ようし、ヘバるなよ、ザクロ!」
「わかってる!」
「よし、戦闘開始!」
……。
「まずは様子見の『黒点』からだ!」
「了解!」
ミタマの指示に合わせ、タカマガモリの腕を振りかぶる!
ナマケモノ怪獣は動く気配はない。
こちらを向いて直立したままだ。
タカマガモリが手を強く握って突き出す!
腕部から黒炎の弾がドシュウと発射した。
黒い火の尾を伸ばしながら弾は飛んでいく。
『ナマヅメ』に弾が当たる直前。
怪獣の足だけが動き、シュッと右に避けた!
その速さはまるで武術の踏み込みのように鋭い!
「くっ、連続発射だ!」
命令通りにタカマガモリを動かす。
右手左手を交互に突き出す連続黒点弾!
しかしそのことごとくが避けられる!
と同時にナマケモノ怪獣は距離を詰めていく!
機体1体分ほどの間合いまで近づかれた!!
「焔輪!」
タカマガモリの手甲から刃が──
しかしこちらの武装より先に敵が動く!
ナマヅメは腕を振りかぶり、伸ばす!!
腕は想像していたより大きく伸び、1体分の間合いを超えていく!
腕の先には──巨大で鋭利な爪!!
私はタカマガモリにガードの姿勢を取らせた!
両腕で顔を覆い、背を縮める!
ギャアアイイッ!!
怪獣の爪が腕にぶつかる音。
悲鳴のように鳴り散らされる。
今すぐ行動に支障の出る傷はない……けど!
腕にはしっかりと深いミゾのような傷がついている!
こちらは一旦距離を取ろうと後退する。
だがナマヅメはスッスッと間合いを埋める!
機体1体分の間合いを的確に取ってくる!
ナマケモノみたいな見た目の癖に俊敏な……!
こういうチマチマとダメージを稼ぐタイプの敵は苦手だ!
頭に血が昇る!
いや、この状況ではその方がいいのか……?
「……やはり、おかしい」




