21話:事件解決!?暗躍する者達!!
20分ほど経過しただろうか。
大型自動車くらいの大きさの球が、突然姿を現した。
中から、制服を着た人型が数人出てくる。
『特警』なのだろう。
彼らの登場をモニター越しに確認した途端、私は地上に戻された。
もう安心、ということかな。
彼らは身分証をミタマに提示した。
「STES実働班第二隊長、ミタマです」
「は、ご協力、感謝します」
「いえ、どうも。後はお任せします」
「は!」
……もしかしてミタマって、結構偉い人?
そんな形式的なやりとりを聞いて、ツリ目が唸った。
既に両手両脚を拘束され、両目も塞がれている。
「て、てめえ……STES……『怪獣殺し』だったのか……!」
それを聞いたミタマは、ツリ目の方を向く。
「その呼び方を使うお前は『怪獣信者』か」
怪獣……信者?
言葉から察するに、怪獣を神として称える狂人か。
もしくは怪獣を強烈に愛護する狂人のどっちかだろう。
「怪獣信者がなぜ誘拐を企てる」
「ケッケッ……動物殺して気持ちよ~くなるカスに教える事なんてねえよ!!」
ミタマの目の光が若干の赤みを含む。
「お前は裁かれ、俺は許される。それが社会の選択だ、犯罪者よ」
そう言い捨てる声色は、低く、鈍い。
特警によって、ツリ目の口に拘束具が付けられた。
手首を掴まれ、特警の乗り物に、タレ目と一緒に連行されていく。
「俺は……正義の味方だ」
ミタマはポツリと呟いていた。
ほんの少し、不安げで、さみしげだった。
もしかして、ミタマに家族がいないのって……。
怪獣に、起因するのだろうか?
ミタマの正義に、ちょっと触れられた気がする。
ミタマはそれを見送ったあと、こちらを向いた。
目の光は穏やかだった。
「ザクロ」
……イナバくんとの会話で色々知ったからだろうか。
ミタマと目を合わせづらい。
「改めて、すまなかった」
「……」
「殴りたければ、好きに殴って……」
「お姉ちゃん!!!!!」
急に横から抱きつかれた。
ツバキだ!!
服や可愛い顔に土汚れがついているけど、それ以外は無事そうだ!
ツバキの声とぬくもりを感じて、急に嬉しさが湧いてきた。
胃の痛みも、どこかへ消えてしまいそうだ。
私もギュッと抱きしめ返す。
「ああ、よかった……よかったぁ……!」
「お姉ちゃんこそ、無事でよかったよぉ……!」
グスグスと泣きながら、嬉しそうにしているツバキ。
ギュウッと、1分ほど抱きしめあった。
ツバキがパッと顔を離して、私に質問する。
「それで、その……これは、この……人?たち?は、なに?お姉ちゃん知ってるの?」
うっ……!
そういえば、妹は宇宙人の事なんて全然知らないんだった。
私にとってはそこまでの問題ではない、のかもしれないけど……。
ミタマやイナバくんにとっては、すごくマズい状況なのでは?
すると、イナバくんの姿がピョコッと現れる。
「わあっ!?」
「はじめまして、バキ……じゃなくて、土壇河原 椿ちゃん!」
「えっ、は、はじめまして……」
「ボクはイナバ!ボクらの事やザクちゃんについてはボクから説明するよ!」
え、いいの?
「お、おいイナバくん!地球人への関与は極力……!」
流石にマズいみたいだ。
ミタマが止めに入る。
「そんなこと言ったって、ここまで見られたらどうしようもないでしょ!?」
イナバくんがプーッと怒った。
会話から察するに、記憶を消すような便利な道具は無いっぽい、か?
「だったらいっそ全部話して、バキちゃんの善性に頼る方がいいと思うんだよね!」
「善性……」
「ザクちゃんがこんなに良い人なんだもの!バキちゃんだってきっと良い人だよ!」
えっ。
「……そりゃ、俺だってそう信じたいが……」
えっえっ。
「あと!!ボクもミタマに騙されて怒ってるって事、忘れてるわけじゃないよね!?」
「ぐうっ!!!!!」
忘れてたな、ミタマ。
「信じてくんないなら、口きいてあげないからね!!」
イナバくんがプイとそっぽを向いた。
「ああっ!分かった、わかったよイナバくん!こうなれば仕方のないことだ、な!」
ゴツゴツとした造形のミタマが、あたふたと慌てている。
なんともコミカルだ。
あ……そうか。
ミタマにとってイナバくんは、戦友であり、親友や家族であるんだな。
────
イナバくんの説明は実にまとまっていた。
さすがAI、要約がうまい。
ツバキも、驚きつつも納得した顔で話を聞き終わった。
「そうだったんだ……お姉ちゃんが、あのロボットを……」
「うん」
「……私のために……」
「う、うん、まあ」
そういえば確かに、最初の戦いは妹のためだった気がする。
それを本人の口から言われると、恥ずかしい気持ちだ。
「やっぱり、お姉ちゃんはヒーローなんだね」
「やっぱりって、まるで以前もそうだったみたいに」
「ヒーローだったよ、私にとっては」
「またまたー」
「もう!お姉ちゃんのいじけ屋!」
むくれる妹も可愛いものだ。
「それはそうと、怪獣退治しながらお仕事って大変じゃない?」
「んえっ」
「行き当たりばったりでパイロットになったってことは、職業が変わったってことじゃないんでしょ?兼業というか……」
さすがツバキ、しかしその洞察力は今発揮するべきじゃない!!
「いやその……」
「ザクちゃん!そんなに恥ずかしがる事じゃないでしょ!」
イナバくん!!!!
やめろ!!!!!!!
そのお節介は私を殺すぞ!!!!!!
「お姉ちゃん、もしかして……」
「在宅勤務だって、立派な労働だよ!」
「あ、そうなの?」
フヒュウ〜〜〜
イナバくんナイスゥ〜〜
まったくアシストの天才だよキミはぁ〜〜
ツバキは少し考えてから、私の前にズイと寄ってきた。
「お姉ちゃん、私決めた!」
「な、なにを?」
「上司に頼んで、山梨の支社に職場を移してもらう!」
「ええっ!?」
「で、私も山梨にうつる!お姉ちゃんの事、心配だから!」
そんな簡単に決めていいの!?引っ越しって、結構大変な決断なんじゃ!?
私は社会人になって以来、引っ越したことはないけども。
「っていうか、なんなら一緒に住まない!?」
「ムリムリムリムリムリムリ」
首が痛むほど横に振りまくった。
自分のダメな所を妹に見せるわけにはいかない。
「そっか、ムリか……でも!ちょくちょく顔見に行くからね!!」
「う、うん……」
「ミタマさん!イナバくんさん!」
ツバキが、少し離れた位置にいるミタマとイナバくんの手を握った。
いや、イナバくんの手は握れずに空を切る。
「お姉ちゃんのこと、く、れ、ぐ、れ、も!……お願いしますね!!」
「お、おお……」
「はい……」
「あと!!!事情があったと言えど、お姉ちゃんの事蹴ったの、忘れませんからね!!!」
「「はいっ!!!!!!」」
私にはツバキの顔が(角度的に)見えないけど、ミタマとイナバくんがタジタジになっている。
よほど気迫のある表情なのだろうか。
「なんかすごい……気合入ってるね、ツバキ」
つい声をかけてしまう。
ツバキはこっちの方を向き直り、私の両手もギュッと握った。
「お姉ちゃんは、私の事をずっと守ってくれてたんだもの……子供の頃は……」
キラキラとした瞳で私を見つめている。
いや、言うほど守ってあげた覚えはないんだけども。
「だから、次は私が……」
ツバキは目をギュッと閉じ、パッと開いた。
「私が絶対守護ってあげるからね……」
そう言ったツバキの目は、据わっていながらも強い眼光を放っていた。
愛情……欲望……違う。
崇高な使命感……殺意に似た決意?
「それじゃあ……私、帰るね」
ツバキは名残惜しそうにしながらも、別れを告げた。
ミタマが、自分達の事を口外しないように重ねてお願いをする。
ツバキは自信たっぷりに頷いた。
手を大きく振っている。
「何かあったら言ってね!絶対ね!」
「ツバキこそ、不審者には気をつけてね!!」
「うん!!!!」
──やっと、嵐が過ぎ去った。
そんな気分だ。
私は、はああと息を漏らして木にもたれかかる。
ミタマへの報復など、すっかり忘れていた。
「なんだか、イヤな予感がするな……」
そのミタマが、そう呟いた。
「そんなに信用できない?」
イナバくんが私の代わりにツッコんでくれた。
ミタマは慌てて言葉を返す。
「ああ、いや!ツバキの事じゃない」
ミタマが誘拐犯のいた場所を見つめる。
すでに特警に連行され、飛び去った後だった。
「『怪獣信者』は、テラス因子を作り出せる者をさらって、何をするつもりだったのか……?」
ふむ……と、私も考えてみた。
知識の足りない私が考えてもしょうがない、という結論しか出なかった。
「……何があろうとも、俺は怪獣に勝ってみせる」
ミタマはこちらを見て頭を軽く横に振り、言い直した。
「……『俺たちは』」
……ミタマの、STESの正義。
『怪獣信者』の正義。
ツバキの正義。
私の正義。
大小それぞれの正義が混じりあったこの戦いは、きっとまだ始まったばかりだ。
当然だけど、心療内科には行きそびれた。
第3章はこれにて終わりです。
次回更新はちょっと一週間ほど間が空くかもしれません…!申し訳ない!
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