20話:脱出!そしてミタマは銃を撃つ!
『瞬転移機』。
着用者を高速でタカマガモリのコクピットへ移動させる機械。
すっかり存在を忘れていた。
大気圏内のカタマガモリまで真っすぐに飛び、機体を突き抜けてコクピット内へ。
着いた瞬間、私は尻もちをついてへたりこんだ。
ここは、驚くほど静かだ。
なんだかもう、わけがわからない。
ミタマのアレは全部、演技??
「ザクちゃん!」
目の前にイナバくんが現れる。
そういえば、ここならイナバくんと喋れるのか。
「イナバくん……」
気の抜けた声が出てしまった。
「なんだか汚れてるけど……無事っぽいね!よかった!」
「……ツバキ!!ツバキは!!??」
ハッと気づいた!
私は無事だけど、ツバキはどうなったの!?
銃しか武器が無いなら、ツバキの無事はどうやって確保……
「グエエエエエエエエエエエ!!!!」
突然、強烈な断末魔がコクピットに響く。
私がビクッとすると、イナバくんが謝ってきた。
「ご、ごめん!ミタマのボディから音声を拾ったんだけど……」
コクピットのモニターに映像が現れる。
ツリ目とタレ目が倒れているのが見えた。
画面の下方両端には、ミタマの手がある。
察するに、これはミタマの視界がほぼそのまま映像になってるようだ。
ツリ目とタレ目の手足からは血……だろうか?
白い液体が漏れ出ている。
「痛いか?あいにく、唯一の非致死性武器はザクロに渡してしまったからな」
ミタマの声。
武器はあの銃だけじゃなかったんだ!
そこから、嘘だったのか……。
「て、てめえ……」
そう吐き捨てたツリ目の身体に、ミタマが指を向ける。
ツリ目はそれを見て、怯えるように縮こまった。
腕か指に武器が仕込んであったのだろうか?
「……ザクロ」
考え事をしている最中。
ミタマが急に私に呼びかけた。
「……え!?あ、う、や、おお……」
私は、ミタマに対するモヤモヤした気分が解消されきらない状態だ。
そこに急に呼びかけられたせいか、変な返事が出てしまった。
「すまない。後で好きなだけ殴ってくれ」
「あっ、えっ、お、おう……」
返事に困って了承してしまった。
とりあえず舌を落ち着かせようと、息を止めて唾を飲みこんだ。
ぶはっ!と息を吐き、声を発する。
「結局演技だったんだね」
「ああ。たぶん『瞬転移機』の事は憶えてないだろうと思ったが、やっぱりだった」
「ごめん」
「いや、むしろそれが好都合だった。おかげで本気でキミが怒ったからな」
「怒ったのが、よかった?」
「ああまでキミが本気の感情を見せたからこそ、コイツらも人質交換に素直に応じてくれた」
ミタマが誘拐犯を指さす。
「……そのために、弾を抜いた銃を渡した?」
「本気でキミに嫌われる必要があると考えた。誘拐犯が俺の言う事を『本物』と信じないと、作戦は成り立たない」
……。
まだ胸が痛む。
いや、痛いのは胃か。
「あの時……」
「うん?」
「あの時、私の事を使えないだの根性足りないだの……」
胃の中の痛みを、少し吐き出した。
「言った」
「アレは……」
「まったくの嘘だと言えば、嘘になる」
「……」
「だが、キミにはそれを補って、余りある『良いもの』があると思っている」
「テラス因子?」
「……それだけじゃないさ」
「……」
それ以上会話をする気になれなかった。
「ツバキは特警が来たら解放する。それまで我慢してくれ」
そうだった。
ツバキの安否が最優先だろうが。
はあ、なにやってんだ私は。
首の力を抜き、頭を落とす。
それを見たイナバくんが、ふわっと私のすぐ横に来た。
「ごめん、ザクちゃん」
「……イナバくんは知ってたの?」
「ぜんぜん!ボクも騙されたよ!なんだい、1人で勝手な事して!」
頬を膨らませ、身体をばたつかせ、プリプリと怒りだした。
フー!とイナバくんが大きく息を吐く動きをする。
そして、少しさみしげな顔をして、私に語りだす。
「でも、ミタマも必死なんだ。それだけは、分かってほしい」
「必死っていうのは、『人を守ること』?『怪獣を倒すこと』?」
「どっちも。どっちもだよ」
欲張りだなあ。
なんて、必死になってすらいない私が言えた事じゃない。
「ミタマ、家族も友達もいないんだ」
「えっ」
「ザクちゃんとバキちゃんがお話してた時もね、その会話が聞こえてたんだ」
「う、うん」
「2人は仲が良いんだねってボクが言っちゃったら、ミタマがさみしがっちゃって」
「そう、なんだ」
ミタマが寂しがる?
そんな時もあるんだろうけど、想像つかない。
「総長と通話してたんだよ、こっそり」
ああ!
あの時、私が押し入れを開けたらミタマは焦ってた。
アレはそういう事だったのか。
いやしかし。
「ジンギ総長と?」
「うん、ミタマにとっては、あの人が親みたいなものだから」
なるほど。
ミタマが組織に、ジンギ総長に忠実なのは、そこからか。
「本当は、さみしがり屋なんだ、ミタマ」
「うん」
「でも、いつもは強がってる」
『いい姉だな』。
妹の前で強がろうとする私に、ミタマはそう言ってた。
「だからさ、だから……必死なんだよ」
私はなんとなく、最初の怪獣戦でミタマに叩かれた頬を撫でた。
「嫌わないでほしいんだ」
ミタマも、耐えてるのかもしれない。
色々と。
案外……私とミタマは、似ているのかもしれない。
私は鼻でフーッと息を吐いた。
「わかった」
「ありがとう」
「ヤなとこあるのは、お互い様だしね……」




