19話:逆転の一手!それでも…!?
見捨てられた。
使えないと言われた。
それは何度も味わった経験だった。
でも、裏切られたのは初めてだった。
私は悲しくて、顔から出せる液体を出しっぱなしにして立つ。
妹が見てる前だっていうのに。
その事実に気づいて、また悲しくなった。
最悪だ。
「へ、へへ……俺らを察知したところから考えるに、お前、特警か、その仲間だろ?いいのか?こんな事してよお……リスクがデカすぎるんじゃねえのか?」
ツリ目が下卑た笑みを浮かべる。
「確かにな。だが、こちらにはこちらの……『仕事を確実に成功しなくてはならない』という正義がある。正義の為なら、多少の悪事は目をつぶらんとな」
その言葉にカッとなって吠えた。
「多少!?誘拐の手引きが多少の悪事だってのか!?お前!!!」
「文句はその病気を根性でなんとかしてから言ったらどうだ!!!」
「ぐぐぐ……!!」
思えばたしかにそうだ。
今までミタマが私の勝手を容認してきたのは、怪獣退治という目標を果たすためだったように思う。
……逆に言えば、怪獣退治を果たせないなら、私は邪魔なだけ、か。
コイツの本性に、もっと早く気づいていれば……。
「俺に……いや、『我々』にとって、地球人の安全も優先順位は高いが、最上位ではないんだよ。なにせ地球人より、外星人の方が数が多いんだからな」
…………もはや、何も言う気力が無い。
「さて、犯罪者諸君!キミらがその女性を解放するなら、こちらはこの女性を渡そう!」
タレ目がこちらに、いや、ミタマに銃を向ける。
「ざけんな!てめえがその女を渡すのが先だ!」
ミタマは大きく、わざとらしいほどのため息を吐いた。
「わかった。だがこちらは彼女を拘束する道具を持っていない」
そう言って、ミタマはまた私の手首を締めあげる。
痛みと一緒に、なにか硬いものが触れるのを感じた。
……!
「拘束具は余ってないか?」
「……おい!」
ツリ目がタレ目にまた、アゴで指示する。
タレ目が、腰につけていた機械仕掛けの輪──おそらく手錠──を、手に持った。
「投げ渡してくれ」
ミタマの提案。
タレ目はツリ目の顔を見る。
ツリ目は片腕でツバキを捕まえつつナイフを突きつけている。
そしてもう片方の腕で、タレ目の持っていた銃を引き抜き、ミタマに向けて構えた。
その状態で、タレ目に命令する。
「投げろ!」
ツリ目の指示で、タレ目が拘束具を大きく振って投げる!
と同時に、ミタマが握っていた私の手首。
その拘束が解かれた!!
私は姿勢を低くして、ツリ目に向かって走る!!
「んげっ!」
「うあああああーーー!!!」
そして──手に持っていた、いや、持たされていた銃を握りしめ、狙いを定めた!
クソッ!さっきまで泣いていたせいで、視界がぼやける!!
でも当てる!!絶対、当ててやる!!
この為の作戦!!
私は気合を入れ、引き金を指で引いた!!!
カチッ、と音が鳴り──
何も、起こらなかった。
……あ?
何も、起こらなかった!?
じゅ、銃、引き金、ちゃんと引いたのに!?
何も出てこない!?なんで!?
弾切れ!?ミタマがやらかした!?
目の前が真っ暗になって、脚がもつれて転んでしまった。
誰かが、私の腰を踏みつけている。
「んんー!!んんんむーーーー!!」
ツバキの叫び声がまた一段を大きくなる。
「へっ…へへへ……脅かしてんじゃねえよ!!!!」
ブチ切れるツリ目の声。
声の位置からして、私を踏んでいるのはコイツだ。
「すまない。だが、こうした方がスムーズに引き渡せると思ってな。暴れている地球人の手首を握りつつ拘束具をはめるなんて、俺には難しいんだ」
……途中、硬いものが、ミタマの銃である事には気づいた。
全部、作戦なんだと思った。
誘拐犯を油断させて、私が不意打ちする作戦なんだと。
上手くやれる、やってみせると気合を入れていたのに。
……こんな短時間で、2度も裏切られるとは思ってもみなかった。
私は、私はなんて、哀れな……。
「さ、今度はそっちの番だ。人質を渡してくれないか?」
ミタマの声が、倒れた私の後方から聞こえる。
「へへへへ……今ここでお前を撃てば、どっちも手に入れられるとは思わねえか?」
「このまま俺を生かしてくれば、キミらが安全に脱出する手引きをしてやるぞ?」
ミタマの提案。
一瞬の沈黙。
「こっちとしても、キミらが捕まって事情を吐きでもされたらちょっと困るからな。まあ、犯罪者の言う事を特殊警察がどれだけ信用するか、とも思うが」
「ムカつく言い方しやがる……」
怒り収まらぬ声色の、ツリ目。
「……だが、手引きはスゲー欲しい。それに、俺ら2人で人質2人を見張るのは色々面倒だ」
何かがドンと叩かれるような音。
誰かの足音。
「行け!」
どうやらツバキが解放されたようだ。
……もう、それだけ果たされたなら、どうでもいいや。
もう……。
「あれだけ言ったのに、まだキミを信用しているとでも思っていたのか?」
ミタマの声。
やめろ、もう、分かったから。
「キミの銃の『手首』……じゃない、銃の腕なら既に見せてもらった」
?
「だというに、キミに銃を預けるわけがないだろう。考えなかった、のか?『思い出せなかった』、のか??」
???なに言ってんだ、こいつ??
私がミタマの前で銃を撃ったことなんてない。
タカマガモリに乗った時やってた、黒点の命中率の事を言ってる?
いやでも、あの攻撃はミタマたちが照準補正をかけていたわけだから……ああ?
……思い出す??
手首????
……あ。
「オラ!立て!」
今度はタレ目が私のケツを蹴り上げた。
見ると、銃を突きつけられている。
私はゆっくりと立つ。
そして、手首の機械のスイッチを入れた。
私の身体は光をまとい、急にビュンと空に向かって飛んでいく。
「あっ!?」
という、ツリ目の驚いた声しか届かなかった。
それくらい、高速で飛んだのだ。




