18話:誘拐犯との対峙!そして……裏切り!?
進む道は住宅街から大通りへ、大通りから山道へ変わり、舗装された車道から荒れ果てた歩道へと変わっていった。
ミタマは人気が無いことを確認したのか、姿を現した。
「ザクロ、ここで一旦降りよう」
「ん……」
荒れた坂道をスクーターで登ろうとするのは危険だし、うるさい。
言われたとおりにスクーターを止めた。
ザカザカと早歩きで坂を進む。
脚が重い、身体はダルい。
休みたいと、ムズムズと脳が私に訴える。
妹が危機だっていうのに、身体はワガママを言って聞かない。
我ながら情けなくって、鼻水まじりの涙が出てきた。
「ザクロ……」
心配するようなミタマの声。
私は立ち止まり、両膝に手をつく。
深い呼吸を2回ほどしてから、話しかけた。
「ねえ、ミタマ」
「どうした?」
「私、一緒に行かないとダメかな」
ああ、つい言ってしまった。
「何を今更……とは言えんか。スクーターで移動させる為だけなら、君がこれ以上同行する理由は無いんだからな」
その言葉にうなづく。
ミタマは額に手を当ててから答えた。
「できれば一緒に来て欲しい」
「なんで?」
「今は少々答えづらい。だが、妹が助かる確率は少しでも上げておきたいだろう?」
ずいぶん濁った回答だ。
「根性みせろ、とは言わない。だが……たのむ」
「……どうしても?」
「…………」
ミタマも深い呼吸をした。
いや、ため息だったかもしれない。
「どうしても、だ。頼む」
「……分かった、信じる」
私はまた歩き出す。
もしかしたら、誰かにケツを叩いてほしかったのかもしれない。
「友情に感謝する」
友情……か。
坂道がなだらかになっていく。
頂上が近いという事だろうか。
そう思っていると、前に……
前に人影が、あった!!!!
はやる気持ちを抑え、ミタマにボソッと話しかける。
「ミタマ、武器はあるよね?」
「無論だ」
ミタマはそう言って銃を取り出す。
いかにも宇宙人が使いそうな、流線型のカラフルな銃だ。
それに、小さいミタマの片手に収まるほどに小さい。
いまさら宇宙人の科学力を疑うわけじゃないけど……。
「『瞬間気絶銃』だ。当たった相手の意識を短時間奪う針を飛ばす」
てっきり光線銃かと思ったけど、針なんだ。
とにかく、犯罪者に対抗する手段があるなら安心できる。
「行くぞ!」
私はコクッと返事して、進む!
前方の人影は、私が進むに連れてハッキリと見えてきた。
2人が1人を脇に抱えて運んでいる!
抱えられているのは……服装からして間違いない!
ツバキだ!!
「動くなっ!!」
ミタマが吠えた。
ビクッと身体を震わせた人影たち。
2人ともがベージュのフードつきパーカー。
黒1色のシンプルなカジュアルズボン。
それと軍手。
振り向くと……普通の地球人男性の顔立ちだ。
しかし両方とも、肌が異様にツルツルで、髪がない。
おそらくゴム製の、作り物の顔。
とにかく、やっと追いついた!
「んー!んんー!!」
犯罪者が振り向いたので、抱えられていたツバキの顔を見れた!
やっぱりツバキだ!
口は、一見すればただの白マスクのように見える機械で塞がれていた。
手首足首も、手錠のようなもので拘束されている。
「ツバキ!」
「!?!?」
ツバキは驚いたような顔をしている。
なぜ私がここにいるのか、という驚きだろう。
とにかく、ツバキが無事なことにホッとした。
良かった……本当に……!
私が安堵していた瞬間!
犯罪者の1人、ツリ目の男がナイフを出した!
ナイフがツバキの首元に触れている!
「動くな、はコッチのセリフだ!特警!」
ツリ目がものすごいガラガラ声で叫んだ。
「兄貴!」
もう1人の犯罪者……タレ目の男が、ツリ目をそう呼んだ。
「おちつけ……問題ねえ、問題ねえよ……」
ツリ目がタレ目にブツブツと話しかけている。
いや、自分に言い聞かせているのかもしれない。
「そうだ、何も問題ない」
……!?
そう言ったのは、ミタマだった。
「誘拐犯……取引しないか?」
取引?
いったい、どんな作戦なんだろうか。
「その女と、この女……交換しないか?」
「「え?」」
私と、ツリ目の誘拐犯が、同時に声を出した。
「そもそもキサマらは、攫う相手を間違えている」
「なに!?」
「テラス因子検索機で調べてみろ」
「……おい」
ツリ目がタレ目にアゴで指図した。
タレ目が懐から機械を出し、スイッチを押す。
すると、犯罪者たちの背後、木々が映るだけの景色だった空間がスっと消え──。
代わりにUFOのようなものが出現した。
そしてそれと同時に、UFOがグオーンと音を鳴らす。
機械の稼働音だろうか。
タレ目が機械を見る。
「なっ……兄貴!テラス因子がスゲェのはこっちの女じゃねえ!あっちの女だ!」
あきらかな狼狽え。
「なにい!?」
「彼女らが会話してる最中に検索機にかけたせいで間違えたんだろう?安物の検索機では正確さに欠ける」
「なんっで間違えたんだ!」
ツリ目がタレ目を叱った。
「あっちの女の因子反応がスゴすぎて、2人いるのが分かんねかったんだよ!」
「っくぁ~~!」
ミタマは犯罪者どもにご親切に解説をしている。
けど、こっちは未だに理解ができてない!
「なんでそんな事わざわざ教えるの!?」
ミタマの方を向いた。
しかし、ミタマはこちらを向くことなく語る。
「今回の事で改めて確信した。お前では無理だと」
「なっ……!」
「そのテラス因子生成量は魅力的だが、『仕事』を任せるにはあまりにも不適切すぎる」
「い、今更そんな!」
「そう、今更なんだ。君を交代させるには、相応の理由が必要になるだろう」
「ミタマ!なに考えてるの!?キミはそんな奴じゃ!」
イナバくんも我慢ならなかったようだ。
ミタマの機体から声が聞こえてくる。
……が、ミタマが体のスイッチを押すと、その声も止まった。
「『犯罪者に誘拐された妹の代わりに、姉が犠牲になった』。強引だが、交代する理由にはなりうる」
ミタマは両腕を軽く広げ、語るように話す。
「んんんーーー!!!」
ツバキにも会話が聞こえているようだ。
その言葉に目いっぱい反抗の意志を示している。
「ツバキだったか?キミの意志など、どうとでもなる。地球人の命がかかっているなら尚更、な。どうせ断れまいよ」
こ、こいつ……!
私は我慢ならずミタマに掴みかかろうとする。
しかしミタマはスッと飛び、私の背後に回って両手首を掴み捻る。
「動きは遅い、判断は鈍い。そのうえ感情を制御することも、気合を入れることもろくに出来ない」
「ぐうっ!ううううっ!!」
「それでよく『ヒーローになりたい』なんて言えたものだ」
なんとかして逃れようとするが、ミタマはギチギチと私の手首を締めあげる。
ビキビキと痛みが走った。
私は膝を落として、たまらず座り込む。
しかし。
「立て!」
ミタマは私の尻を蹴り上げた。




