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96 操り人形の微笑み


 記憶の中の自分は、いつも笑っていて、幸せそうだった。

 すっごく、惨めだった。


 暖かそうな食卓の中で、自分の周りの空気だけ冷めきっている。

 そんな中で、味のしない母の手料理を食べる。

 ご飯の後、自分の部屋のドアにもたれかかって、無表情を浮かべている。

 いつからこんなに、冷めてしまったのか。


 ある日、部屋の窓から雪を眺めていた。

 何の感情もない、無表情で。


 すると後ろから、パパが声をかけてきた。


『淳君。サンタさんには何を頼むの?』


 そうだなぁ……。


 表情を作って振り返る。無視はあまりにもかわいそうだし、その後の関係に大きく響く。


『うーん、欲しいものは特にないけど……。だってパパ、僕に必要な物くれてるもん!』


 これは、人懐っこくてかわいい子供の完璧な答え。

 こういう答えに、大人たちは胸打たれ、親バカになっていく。


 望むなら、窓の外の雪のように、数日後には溶けて消えてしまいたい。

 数年後には忘れられてしまうような、真っ白な存在に。


 パパは俺の答えに満足して去って行った。

 窓の外に視線を戻す。


『……どうすることもできないなぁ……。でも、もし選べるのなら――』


 そうつぶやいた。

 気づいた時には口から出ていた。

 あの父親、パパが気に入らない。ママが気に入らない。

 パパとママを天秤にかけて、産みの母親を捨て、俺はパパを選んだ。


 昔磨いた演技力と、父上を利用しての情報収取能力で、ママの不倫の影をパパの前でちらつかせた。

 ほらね。狙い通りパパは食いついてくれた。怪しんでくれた。……アハッ! うれしいなぁ……。


 俺が欲しいのは、母親との疎遠。

 親の離婚が、俺へのクリスマスプレゼントだよ。パパ。


 父親が持つ離婚届を見て、ほくそ笑む。

 そら見やがれ。俺の勝ち。父上もパパも、いい働きをしてくれた。

 チェスも、将棋も、囲碁も得意だ。


 チェスならチェックメイト。

 将棋なら王手。

 囲碁なら終局。


 もう、逃げ場は()()()()()()。ゲームはもう、おしまいです。


 敬語に変えた。

 もう他人だから。


 子供をあやすような言い方だ。自分の方が年下なのに。







「はぁ、はぁ……もう、走りすぎだって……。」


「はぁ、はぁ、そうだね。もう帰ろうか。」


 佐藤は家に帰って大丈夫なのか? という疑問が、無意識に顔にでる。


「……何? その顔。」


 佐藤はクスッと笑う。


「大丈夫だよ。決して、害はなさない。……今は、たぶんね。」


 最後の言葉が気になった。

 疲れるだろう。家に帰るのは。

 家は、帰る場所。

 そこがない。いや、ありはする。

 形だけの、家。


 そうして僕らは、駅に向かって歩き出した。




「見て、あの二人。」


「え、イケメン。というよりショタ……?」


 電車で前に座る女子高生が、前に座る男子中学生二人を指さし、小声で話している。


「ていうか寝顔可愛すぎ。」

「ちょ、あんた声デカすぎだって。起きちゃうでしょ。」


 疲れて眠ってしまった二人は、無事、降りる駅を通り過ぎたのだった。


 めでたしめでたし。……なんて、もし物語がここで終わるなら、あなたはどうします?

 クレームを入れるでしょうか? それともまだ続けてほしいとコメントしますか? 友達などに愚痴を言う? そのままスッパリ終わったんだとあきらめる?


 ……いろいろありますね。

 え? 私だったら? うーん。どうでしょう……。


 まあご安心を。話はここで終わりません。

 あと残ってるなぞは……『落ちこぼれの鬼桜くん』と……『××くん』『白髪緑メッシュの子供』などなど……まあ『旅館で会ったお兄さんの謎』や『陸が失った記憶』『この場所に入ると来る、という認識の違い』……。

 この物語は、まだまだ終わりません。


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イイネ等、よろしくお願いします。 え? なぜかって? しょうがないなぁ、そんなに言うなら、教えてあげないこともないですよ。 モチベにつながります。
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