94 沈黙の重み
次にやってきたのは自然公園だ。
のんびり道を歩きながらいろんなことを話した。
最近のニュースやらなんやらを。
「……ショッピングモールに置いて来たぬいぐるみ……どうなるんだろう。」
「あッ。」
僕の心配に佐藤はしまった、忘れていた、とでも言いたそうにあッと声を出した。
しばらく黙る。
「……後で……取りに戻ろうか。でも、まだ間に合うかな……。」
「うん……。」
などという話もして、池の中にいる鯉や、池にとまる白い鳥を見ながら歩いていた。
すると、いつの間にか夕方になっていて、公園のベンチに座って話していた。
「………………。」
なぜかいきなり、佐藤が黙ってしまった。
空気が重い。気まずいわけではない。ないが、空気が重いのだ。
「あ、あの、佐藤……。」
「ッ、はぁ~……。」
佐藤が大きくため息をついて僕の肩にもたれかかった。
重いわけではないが、混乱はしてる。
佐藤は静かに目を開けてもう一度ため息をつく。
「……どうしたの?」
「……別に……。」
………………。
もう一度流れる沈黙。
沈黙。そしてまた沈黙。
佐藤は僕から離れ、ベンチの上にもかかわらず膝を抱えて下を向く。
前髪で顔が見えない。いつもなら前髪を上げていただろう。でも今は、そうするべきじゃないと分かる。
佐藤はしばらく黙った後、重い口を開いた。
「……俺ね、妹が……いるんだ。」
「……? 妹なんて……いなかったはずだけど……。」
そうだ。最初は妹なんていなかったと思う。
「……親の再婚でできた……義理の妹なんだけど……。でも、そこが問題なんだ……。」
「……仲が悪いの?」
そうじゃない、と言って首を振る。
「……逆なんだ……。……でも違う。そうじゃないんだ。」
「……じゃあ……?」
「あの家に……帰りたくない……。」
「……え?」
どういうことだ?
「他人が家にいる。」
「……他人?」
佐藤は黙ってうなずく。
他人が家に、とはどういうことなのだろう。
「俺にも、俺を作った親がいる。……最初に、父親の浮気が発覚して、離婚したとき、俺は母親についていったんだ。……そして、母親は再婚。新しくできた父親の第一印象は、ああ、母親が選びそうな人だな、と思った。そしてしばらくしたら、母親を恨んだもともとの父親が、身の潔白と母親の不倫を暴いたんだ。」
「……身の潔白と……母親の……不倫?」
重い。相談が重い。
でも、身の潔白、ということは……。
「……冤罪?」
頷く佐藤に、何の言葉も出て来なかった。
「……母親の不倫が発覚して、俺は仕方なく、血のつながってない父親についていった。その父親の再婚でできた妹なんだよ。」
「………………。」
「でも、」
顔が見えていなくとも、歯を食いしばっているのが分かる。
「その妹が、どうしようもなく怖い……!!」
馬場「尊い系のボーイズラブから一気にシリアスシーンに変った!?」(鼻血を拭く馬場)
尊さ警察「これなら私たちは必要なさそうだな。」
いや最初から必要ありません。