86 朝の問題行動
「なっ、なっ、なんで佐藤がここに!?」
「だーかーら、転校です。」
わかってる。さっき聞いた。
すると、神谷先生が横から口をはさんできた。
「二人は知り合いだったんですか?」
僕らは顔を見合わせた。
先生は佐藤の転校の理由、いじめの事を知っていると考えていいだろう。
ただ、佐藤の僕に対するいじめを話すかどうかは……。
「もともと、俺たちが居た学校は同じで……。」
「そうなんですね。それはよかった。佐藤くんも、慣れない場所に一人だと心細いでしょう。」
どうやら、いじめの事は伏せておくらしい。
それならそれで構わない。
僕としては、いじめの事を伏せておくのか伏せておかないのか、早いとこはっきりさせてもらって助かった。
「……あ、ところで、二人はどうして職員室にいるんですか?」
ずっと気になっていたことだ。
なぜここにいる。
僕の問いに、神谷先生は微笑んだまま答えた。
「朝から問題行動を起こしたからですよ。」
「……は?」
問題行動?
佐藤も成績は良かったし、安藤さんも成績はいい。
そんな二人が問題行動? 喧嘩か?
安藤さんはあまり目立ちたがらないタイプ……だとは思うけど……。
見た目がアルビノっぽいからかなぁ……。
でも佐藤がそれをバカにするとは思えないし……。
「喧嘩ですよ。」
「喧嘩なんですね。」
先生は相変わらず微笑みながらそう言うが、僕としては何も思っているかわからないので怖い……ように感じる時もある。
先生は一般人だ。だから怖くない。でも時々、何を考えているのかわからなくなる――それが怖い。
何を考えているかわからない……。そういう人は僕の周りにはあまりいなかった。
……しいて言えば父さんだ。母さんも分かりずらいかな。最近で言えば千代さんや優斗さん、筮さんもよく分からない。……案外いるな。よく分からない人。
「喧嘩……と言っても口喧嘩のようなもので、手は出していませんが。」
「……そうなんですね。」
考え事をしていたせいで反応が少し遅れたが、少し安心した。
知人が、しかも信頼している人が知人に手を出してしまうのは、少し嫌だ。
「どうして喧嘩したんですか?」
神谷先生に聞く。
神谷先生も一応先生の役職についている。見てはいただろう。
「そのことについては、本人たちに伺ったらどうです? さて、そろそろ教室に戻りなさい。次の授業は数学ですよ。」
そう言われ、職員室を出て教室に向かって歩く。
そして昼・・・
僕は問題行動を起こした二人から事情を聞いていた。
「……朝の問題行動……。それは……。」
さて、ここで問題です。
作「いや待って、またクイズ始まるの!?」
佐藤くんの転校理由は?
ナ「選択肢は『普通の転校』『何か裏がある』『職員室の呪い』の三択かな……。」
白「なんかいつの間にかナレーターさんがキキ側についてる……。」
作「私は『普通の転校』だと願うよ……。」
いじめがある時点で”普通”の転校ではないです。
白「私は『何か裏がある』と思うけど……。だって、偶然陸と同じクラスになるとか……キキ、わざと?」
わざとだけど、それを仕組んだのは私じゃ……。
ナ「俺は『職員室の呪い』……いや、違うな……『神谷先生の呪い』一択だ!(ドーン!!!)」
選択肢四つ目!!?? 誰だ今、裏ルート開放したの!!? ナレーターさん、禁断の扉を開けてしまったのか……!!!
作「さっきナレーターさんの後ろで爆発が……って、今も煙が上がってるけど!? まさか……これも神谷先生の呪い……!?」(失礼)