85 転校生
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
息切れで喉が痛い。足も、もつれてきてる。
足を止めて休みたい。でもできない。
「ッ、あ゙~!!!」
痛い!! 喉が!!
そう考えながらも、足は止めずに走り続ける。
優斗さんはその後、千代さんが来て家に帰って行った。
心配でもあったが、止めることはできなかった。
部外者が首を突っ込むな、と筮さんにまた怒られてしまいそうだ。
朝起きると、洗濯機が爆発していた。
唐突だ。起きたら爆発していて、それはもう驚いた。
おまけにリビングには兄さんからの置手紙。
『陸へ
洗濯機が爆発していた理由はもうお分かりですよね?
そう 私が爆発させました ごめんなさい
私は部活に行ってきます
後片付けを お願いします
空 』
「……はっ?」
思ったより低い声が出た。
僕は手に持っている手紙を握りしめる。
紙がクシャッと音を立て、皺が入る。
「部活? ふざけないでくれる兄さん……! 兄さんのせいで無駄にお金が飛んで行ってるってこと、そろそろ学べー!!!!」
怒りに任せ叫んだはいいものの、何も解決しないので次に移る。
一通りあと片付けが終わり、家を出発。
バス停についたら、ちょうどバスが止まっていた。急いで乗り込んだ――が。
▷主人公・リクは乗るバスを間違えた!
大幅なタイムロスだ!((クリティカル! リクに100のダメージ
▽
そして今に至る。喉が痛い。
「はぁ、はぁ、はぁ、やっと……学校に、ついた……。」
一時間目はもう間に合わない。
確か体育。絶望。というよりもう一時間目終わってるんじゃ?
………………。
一度深呼吸。
吸って……吐く……。吸って……吐いて……。
よし。落ち着いた。
っ………………―――――――――――(虚無の時間――)
――時よ……戻れ――。
できれば朝まで。いや、夜まで!
「こんなことしてる時間はないんだってばぁー!!!」
校門の前でボーっと突っ立ってるのをやめて走り出す。
廊下は歩かなきゃいけないから結構ヤバイ時間だ。
「……おはよう、ございます……。」
「西村さん……!? ……遅刻ですよ?」
一時間目は体育。
ウチのクラスは着替えてるから職員室に来ている。
ドアをガラガラと開けて挨拶をする。
職員室にいたのは担任の神谷 隼人先生。
「それにしても珍しいですね……。西村さんが遅刻なんて……。」
緑がかった黒い髪に眼鏡の優しい先生。……の、隣に誰かいる……?
「……珍しいね、陸が遅刻なんて。」
「西村さん、今登校したの?」
神谷先生の隣にいたのは佐藤と安藤さん。……え?
「……なんで佐藤がここに?」
「御覧の通り、転校です♡」
佐藤がきゅるるんという音が聞こえてきそうなポーズで言った。
…………………。
………………?
………………………………!? !?
「えッ、」
「ストップ。」
叫びそうになったところで佐藤に口を塞がれる。
「フガッ」という声が聞こえた。自分の声だろうけど。
……代わりに心の声で叫ぼう。
スゥ……えーーーーーー!!!!!!???
ナ「おやおや。」
白「まあまあ。」
作「どうしてでしょうねぇ?」
なんでこんなに息ピッタリ?
作「話変わるけど……。」
急だね!?
作「佐藤くんの『御覧の通り、転校です。(はぁと)きゅるるん☆』さ。」
うん?
白「わかった。『萌え萌えキュン』やってほしいんだ。」
はぁ?
ナ「よし。佐藤くん、召喚!」
ちょッ?
佐藤「は? どこここ。」
作、ナ、白「ここは『萌え萌えキュン』をやらないと出られない部屋! この部屋には出口はない……ただ『萌え萌えキュン』をするしか……!」
佐藤「息ピッタリ!」
……ごめんなさい。
佐藤「そして誰!?」
白「出られませんよ? 佐藤くん!」
佐藤「……はぁ……。ゴホン。……おいしくなぁ~れ♥萌え萌えギュン!!」
作、ナ、白「え?」
シュンッ(佐藤退出の音)
……だから言ったでしょ?(言ってない。)(そして、この部屋は再び沈黙する――)
作「なんだろう。このつまらないオチ。」