83 幸せの一歩手前
朝。
「………………。」
全ッ然、寝た気がしなかった……!
あの後陸まで起きてきて……。
片付けも大変だったけど、何より証拠隠滅が……。
……事故で人を殺してしまった人が証拠隠滅するときは……こんな感じなのだろうか……。
一度ため息をつく。
わからない。人を殺したことはないから。
一階に降りると、陸と空はもう起きていた。
「優斗さん。おはようございます。」
「……おっ、優斗。おはよ。怪我とかない? ……って、もう傷だらけだったな……。」
……そういえば、写真のことを、二人は知っているんだろうか。もし知らなかったら……どうする?
気にはなるが、さすがにそこまで聞く気にはならない……。
もし……もし、知らなかったら……?
……どうするというんだ? 部外者なのに……。
一度目を閉じる。昨日の情景を思い出すように。昨夜の公園の写真を、忘れないように。
(……わからない。)
……違う。
(今はまだ、わからない。……だ。)
目を開けて、前を見る。
今の……今の幸せとも言えない環境に、とどめる。
そして、今以上の絶望に見舞われた時に、この感情を思い出すために。
今の感情に、目を背けてはいけない。背けない。
「優斗さん。台所が使えないので、コンビニに行きましょう。……あっ、お金、貸しますから。」
これ以上の借りは作りたくない。
でも、コンビニで買ったものくらいなら、あの金銭主義者も出してくれるだろう。……渋るだろうな……。その光景が目に浮かぶ……。
優斗たちは靴を履いて、コンビニに向かって歩き出した。
ここで章が終わり……だと思ったでしょ?
ダメだよ? ハッピーエンドじゃ済ませないから。
……え? 最低だって? ヤダなぁ。何勘違いしてるの?
物語はまだまだ続くよ?
今ハッピーになったらこの後、今以上の絶望を持ってくるからね?
フフッ。小説家の逆らえない性さ。
作「えー。サイッテー。」
ちょっと! 割り込んでこないでよ!