76 病院へは行かない
……!
優斗さん、頭に傷が……!?
「優斗さん、びょ……病院行きましょう。」
どうしよう。無理をさせてしまって……。
優斗さんは、下を向いたまま静かに首を横に振った。
優斗の綺麗に編まれた長い三つ編みが揺れる。
「………………優斗さん……。」
前髪で顔が隠れて見えないから、どんな顔をしているのかわからない。
いつも通りの無表情……ではない気がした。
どうしたらいいのかわからなくて、呼吸が浅くなっているのを数秒してから気づく。
その時、壁に手をついていた優斗の手がズルッと外れて、優斗が倒れ、床に手をついた。
数秒考える。呼吸がしづらい。
僕の眉間にしわが寄る。静かに目を伏せて考える。
「…………ッ!」
ダメだ。
このままでは何も変わらない。このまんまでいて何が変わるというのだろう。
ゆっくり息を吸い込んで、吐く。
「……優斗さん。救急車を呼びますよ。いいですね。」
僕はひびの入ったスマホを強く握りしめて言う。
優斗さんは静かに首を横に振るだけ……と思いきや、風の音でかき消されてしまうような声で言った。
「ダメ……だ……。」
と。
確かに言ったのだ。
一瞬幻聴かと思った。でも違う。ちゃんと優斗さんの口から発せられた言葉だった。
優斗は言葉を続ける。
「もう……あそこには戻らない……。」
小さい。
さっきと同じかすれた声だ。
こういう時どうすればいいのかわからない。
混乱と焦りで、恐怖や重要なことなど、考えている暇はなかった。
「………………。」
このままでいる訳にはいかない……。ただ優斗さんは、どうしてこんなにも病院に行きたがらない……いや、戻りたがらないんだ?
ダメだダメだ! なら一旦諦めよう。
熱で弱っているとはいえ、優斗さんがすんなり救急車に乗ってくれるとは思えない!
「………………わかりました。なら応急処置をしましょう。」
慌てて包帯を引っ張り出し、手当をする。思ったより手間取ったが、焦りのせいかもしれない。
それとも慣れてないだけなのか。いや慣れるなんて御免だけどね。
一度ため息をついて優斗さんに話しかける。
「優斗さん、何か食べますか? あまりものとか、簡単なものなら作れますけど……。
あっ、先に着替えてください。濡れたままだと熱上がっちゃうので。その間に何か作っておきますね。
……あ、服どうしよう……。優斗さん、身長って……」
兄さんの服着られるかな? それとも父さんの方が……。
その時、玄関の方から声がした。
「た~だいま~。うわービショビショ。」
兄さんの声だ。できればもうちょっと早く帰ってきてほしかった。
後書きに書くネタって、意外とない時はないんですよね……。
白「で、今回はそれをネタに話をしようっていう……。」
ナ「血迷った……?」
作「まあでも話のネタは降ってきすぎて困ってるくらいだけどね……。」
ところで魔女狩りについて調べたくて……。
作「急に話変えるのやめてくれない!!?」
白「調べたいなら調べればいいんじゃない?」
はい。
ナ「すんなり過ぎて気持ち悪ッ。」