74 途切れたキズナ
知ってます? 「きずな」にもいろんな感じがあるんですよ。意味は知りませんが名前に使えそうです!
「絆」
「紲」
「絏」
「緤」
「縻」
「靽」
「鞿」
「韁」
私は「緤」の文字が好きです。(何度も言いますが意味は知りません)
その頃、旅館では陸たちが窓から空を見上げていた。
「あー。雨降りそう。というか、確実に降るよね。」
葵が空を見て不機嫌そうに言う。
よく見ると髪がボサボサになっているから、湿気のせいだろう。ボサボサなのは、双子の光莉も一緒だ。
その時、後ろから
「葵は、天気予報見てないの?」
と声をかけられた。
「「「……は?」」」
僕と葵と光莉の声が偶然にも重なる。
その時、その場にいた佐藤だけが冷静に「……ああ、誘拐事件の時の……。」と言っていた。
「優希……さん……でしたっけ?」
(海斗に調べてもらったから名前も今の住所も特技もIDと校則違反なのにSNSやってること知ってるけど知らないふりをするべし。)
▷サトウは知らないふりを選択した!
▽
思い出した。
葵が誘拐された時に囮(?)に使われたかわいそうな人だ……。
「皆さん、お久しぶりです。優希といいます。」
誰もすぐに反応しなかった。空気が少し張り詰める。
優希……さん……。名字は?
佐藤の時に聞きそびれてずっと下の名前知らないままだから、今のうちに聞いておこう。
「優希……さん。名字は何ですか?」
そう聞くと、優希さんは黙って目を泳がせた。
すると、なぜか佐藤が「深く聞かない方がいいんじゃない?」と言ったので、これ以上は聞かないことにした。
「えーっと……優希……さんでいいですか?」
「……えっと、年下なので敬語は外してください。」
「そういうわけには……。」
敬語じゃないと落ち着かない。なぜだろう。……なぜなんだろう?
敬語じゃないと落ち着かない理由を考えていると、佐藤が優希さんに話しかける。
「優希……くんでいいよね? あれから大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です。葵から聞きました。……確か……佐藤さんですよね?」
「別に敬語じゃなくてもいいけど……。名前はあってる。そうだよ。」
「そうですか。よかった。
陸さんと髪色と目の色が似てるので、葵から聞いた特徴は髪型くらいしか……。」
「仲がいいんだね。」
「はい。昔はよく遊んだんですけど、まさか忘れられていたなんて……。ショックではありましたけど、大丈夫です。」
佐藤はコミュニケーション能力が高いんだなぁ……。
感心する陸を置いて、佐藤は優希に
「……そう。」
と返す。
仲が良かった人に忘れられるショックは、佐藤もよく知っている。
過去に同じ痛みを味わったことがあるからこそ、今の優希の空元気が、痛いほど分かった。
その時、佐藤と優希さんの間に光莉が割って入る。
「仲良くお話してるとこ悪いけど、もうすぐ大雨降ってくるから、帰った方がいいと思うけど?」
雨が降るなとは思ってたけど、大雨だとは……。
「そんなに降るの?」
「降るよ! すごい勢いで。これでもかというほどね。」
光莉は声を上げた。そんなに降るのか?
「雷も落ちるかもしれないから、さっさと帰るよ。」
「「はーい。」」
優希さんと僕の声が重なる。
佐藤は黙っている。スマホを見ながら「チッ」と舌打ちをしていた。
どうしたの? と声をかけても、何でもない、と返ってくるだけ。
気のせいだと思うけど、帰りたくなさそうだった。
白「私、気づきました。」
何に。
白「毎回後書きがのんきすぎるということに……。」
……何を言い出すかと思えば……。
白「そうじゃなくて! 思い出してみてよ! 前話の内容と後書きの温度差を!」
作「……確かに、前話で優斗は三途の川から無事生還したというのに、後書きではサイダー爆発事件について話してるね。」
白「でしょ! それに対して、どう思うんですかキキさん!」
……だから、後書きはのんきでいいの。重い話ばっかりじゃ疲れるでしょ?
作、白「……え? 重すぎる?」
ナ「白は幼いねぇ……。内容が重いんだよ。読者が押しつぶされちゃう。耐えられないよ。」
そう。ナレちゃんの言う通り。
ナ「……待て。誰がナレちゃんだ?」
……私だって、暗い話書きすぎて病むとか嫌なんですけど。
ナ「その暗い話ばっかり書いてるのは誰だ?」
だから、調和してるの。
作、白「……へぇ……。」