66 闇に閉ざされた記録
『今日の企画は……。えーっと、雑談かゲーム配信か悩み相談かなぁ……。みんなはどうしたい?』
――雑談!
――悩み相談させて!
――なんでもいいよ!
――この前やったホラーゲームの他エンディングも回収してほしい!
『なるほど。ラルはどれがいい? この前のホラーゲームの他のエンディング回収してって意見が多いらしいけど。』
『俺に聞くならなんで……。』
なぜリスナーにも聞いた?
その部分はラルさんと同意見だ。が。相変わらずの闇ボイス。でももう気にしないことにした。体が……というか耳が持たないからな。
――バァン!!!
!?
『『!!?』』
突然の大音。コメント欄も荒れている。
「ドア……か? ドアが開いた? だれかが入ってきたのか?」
不幸中の幸いだったのは、ヘッドホンについているマイクで話していたのだろう。入ってきた人に怒鳴られているようだけど何も聞こえない。
『ッ! ……ああ。何■もな■■。■だ――』ブツッ
そこで画面は真っ暗になった。そして数秒して、動画も終わった。
あの時、何が起こっていたのか。それを海斗は聞きたいのだろう。
でも少し、気になる部分がある。
動画を十数秒戻し、誰かが入ってきたところまで戻る。
少し調べたけど、このキャラクターは実際の人の表情や仕草から作っている? のかは分からないや。でも……そうらしい。
おそらくドア、が蹴破られるような勢いで誰かが入ってきたとき、二人ともすごく驚いた顔をしていた。まるで、そこにいるはずのなかった人物がいたような……。
例えば、留守番中に撮影していたとすればいるはずのない保護者がいきなり帰ってきたら驚く。この時間には家にいないはず。と思うだろう。
ただ、まだ気になる事はある。
画面が真っ暗になる少し前の、ラルの仕草だ。
まるで飛んでくる、もしくは投げられる、それか振り下ろされている鈍器からとっさに頭を守るかのような仕草だった。
「………………わからないな。」
考えたって仕方ない。
海斗だって頭が悪いわけじゃない。それに海斗は観察力が異常に鋭い。その海斗でもわからないなら僕だってわからない。わかるわけがない。高望みしすぎだ。
――コンコンコン
ドアがノックされた。
「陸。何見てるの?」
入ってきたのは兄。
「海斗に見ろって言われた事故放送。何が起きたか知りたいんだと。」
「ほぉー。でも分からないだろ? 海斗が分からないなら陸はなおさらわからない。」
そうだ。憶測だから。ラルの不自然な仕草は気にしないでおこう。
「兄さんも早く寝なよ。」
「俺はテスト勉強しなきゃ。」
「別に成績は悪くないよね。」
たしか。そうだった気がする。そんなことをいちいち気にはしない。
「俺は勉強した上でこれ。俺は運動特化なの。勉強特化の陸と比べないでよ。」
僕は体育が苦手。でも勉強は得意だ。逆にフツーに授業を受けててなぜわからないんだ? そんなもの、適当に教科書読んでても分かる。
兄さんにそう話すと、深いため息をついて部屋に戻って行った。
その後、海斗には『わからない。』とかえして寝た。
作「……つまり、動画は終わったけど結局何が起こったのかは謎のままってことだね。え、それでいいの?」
何を言う作ちゃんまん! この話を書いたのは貴様の癖に!
ナ「不確定なものほど、人は興味を持つもの。答えが出ないからこそ、考え続けるんだよ。」
また悟ったふり?
白「まあまあ、謎は謎のままが美しいってことじゃない? ……いや、でもこれってホラーじゃなくてミステリーなのでは?」
記録が闇に閉ざされるなんて……本当に、何か大切なものが消えてしまった気がするよね。
作「結局、一番悟ったふりしてるのは誰なの?」