59 ブラックホールの亜種と結婚指輪の謎
前回の後書き入らんかった。
白「ブラックホールの亜種……。旅館であったお兄さんと同一人物?」
違うよ? 陸は違う人間に同じ表現は使わない。
お兄さん「黒曜石のように真っ黒」
園長先生「日本人形……いや、ブラックホール、亜種」
違うでしょ?
白「確かに……。」
物語の始まりに足を踏み入れた君は、すでにもう片方の足を運命の深淵へと突っ込んでいる。
この先に待つのは光か、それともさらなる闇か——。 いまさら後戻りはできない。
だからこそ、その目で真実を見届けてほしい。
「あ~もぉ~!」
といって園長先生の方に歩いて行ったのは佐藤。
え? 佐藤? 何してるの?
佐藤がどうして出て行ったのか、理由がわからない。
佐藤は園長先生にゆっくりと近づき、拳を大きく振りかぶり、勢い良く振り下ろす。
佐藤の拳が振り下ろされる瞬間、空気が切り裂かれるような音がした。
―――――!!
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
鈍い音がして、気がつけば、佐藤が園長先生を殴った、という事実だけが頭に浮かんだ。
だれも動かなかった。
優斗さんも、千代さんも、まさかここで佐藤が出てくると思わないだろうし。
もちろん僕も、筮さんも、兄さんと紗代さんも。殴られた本人さえも。
そして陸からは見えていないが、白髪緑メッシュの子供すらも。
存在が認識できないように、顔が見られないようにはしたが、下手に動くわけにもいかない。
最低限、自分と一度会っているとバレないようにはした。
「はあぁぁぁぁぁ……。」
佐藤は一度、大きくため息をつき、出口がある方に歩き出す。
薄暗い倉庫の中、古びた木箱が積み重なり、微かに埃が舞っていた。
ギギギ、と音がして薄暗い倉庫に光が差す。
そして無表情のまま、
「思ったより早かったね。ケーサツさん。」
と言った。
だれに向けて言った言葉なのだろう。
ここにいる誰に?
園長先生か、優斗さん、千代さんになのか、はたまた、警察なのか。
それとも……?
「はぁ。」
「どうしたんです? ため息なんかついて。」
「はぁ?」
一人倉庫の中でため息をついていたら、警察の服を着た誰かに話しかけられた。
いまちょうど、倉庫の中にいた子供たちが保護されたところだった。
声をかけてきたのは白髪に赤い目のお兄さん。アルビノという奴か?
アルビノさんはニコニコと笑っていた。
アルビノさんの目は赤い……いや、赤の面積が広いだけで、実際には赤と黄色が混ざった瞳だった。
アルビノさんの瞳は、赤と黄色が混ざり合い、まるで燃え盛る炎のようだった。
一本だけ長い下まつげが特徴の、赤と黄色の目だった。
見覚えがあるような無いようなの顔だが、どこかで会っただろうか?
じろじろと見てしまって、さすがに失礼だったかなと慌てて後ろに下がる。
――ガンッ
「あ、落しましたよ。」
どうやら、さっきの音はスマホを落としてしまった音らしい。
アルビノさんが僕のスマホに手を伸ばす。すると、シャラ、と音がした。
「あ~。ついに壊れちゃったよ。まあ、古いからね。」
といってスマホと音がしたものを拾う。
「ネックレス?」
「そう。誕生日に昔の妹にもらったんだ。でも結構前のだから、そろそろ駄目だね。」
「そうなんですね。」
昔の妹? 結婚や離婚などで妹じゃなくなったとしても、昔の、という表現は不自然じゃないか?
その鎖のようなネックレスには7つほどのデザインの違う金属の輪が付いていた。
アルビノさんはそのままネックレスをポケットにしまい、微笑んだ。
そのあと、ちょっと話してから呼ばれて行ってしまった。
おもに妹の自慢話しかされなかった気がする。
佐藤と話をするために動くと、足元でキラリと何かが光る。
何かと思えばアルビノさんのネックレスについていた金属の輪の内の一つだった。
その正体は……。
「結婚指輪?」
だ。
ダメだ。これは絶対に返さなくては。
だが、もうここにはいない。
「あの……。」
ちがう警察の人に話しかける。
「アルビノの人ってどこにいますか?」
少し失礼かもしれない。
無礼覚悟でそう聞いた。すると――
「アルビノ?」
「……え?」
アルビノの人なんてここにはいない。と言われた。
そんなはずは……。
それから何人かの人に話しかけたが、アルビノを見たという人すらいなかった。
作「結婚指輪の謎って、なんだか不思議だよね。アルビノさんの話もちょっと引っかかるし。」
そうだね。作者が考えたわけじゃないから、そこは知らなくて当然か。
ナ「確かに……でもさ、7つの指輪がどんな意味を持つのか、気になるよね。」
白「アルビノさん、昔の妹からネックレスをもらったって言ってたけど、あれがどう繋がるのかな?」
………………。
作「……あれ? キキ、どうしたの? 急に黙っちゃって。」
白「まあまあ、アルビノさんの話が出るとキキ、何も言わなくなるんだよね。それも仕方ないかも。」
ナ「え、それってどういうこと? 詳しくは教えてくれないの? 拷問?」
ふふ、そこは読者へのお楽しみってことで。