52 過去のデイドリーム
「! 葵! 持っててくれたんだな!」
優希は嬉しそうに言う。
そのあとすぐ、女性がハッと、何かに気づいたような顔になって不自然な動きをした。
まるで、飛んできた何かを避けるような不自然な動き――。
その時の表情から見て、危ないものを避けるような動きだった。
が、葵は急に嬉しそうに大声を上げた優希を見ていたので気づかなかった。
女性がバランスを崩し、地面に足をついた時――。
――…パンッ……
「!?」
――ガリッ!!
「「!!?」」
…パンッ……という小さな音で女性は驚き、音の方を見たが、ガリッ!! という大きな音で優希と葵は音がした方を見る。
音の正体は、踏み割られたと思われるビー玉。
その瞬間、葵の頭に激痛が走り、耳鳴りがした。
女性は深刻そうな顔をして倉庫の壁の方を見ていた。
「………何かあった? ……まあいいか。」
葵はフリーズしていた。
ビー玉が踏み壊されたことに気が付いたのだ。
その瞬間、現実が暗転し、葵の意識は過去の記憶へと飲み込まれていった。
『えーん、えーん。』
知らない場所で、子供が泣いている。
そこにすぐ、キャラの顔入りのエプロンをつけた女性が現れた。
幼稚園の先生だったのか?
女性は、子供を泣き止ませようと慰めている。
そこに、派手な髪色の子供が現れる。
赤い髪に、青色の目。
それは、葵と同じ色。おそらく、葵だ。
エプロンを付けた女性は、葵が現れた瞬間態度を変え、さっきまで泣き止ませようとしていた子供に手を挙げた。
さらに強くなった子供の泣き声を聞いて、他の子供が数人やってきた。
だが、子供は女性にも子供にも、葵にも近づかずに少し離れたところで見ている。
その人込みをかきわけて、青い髪に赤色の目。
葵とは真反対の色。だが顔は葵にそっくり。
双子の姉である、光莉だ。
光莉は子供を守るように仁王立ちし、数秒女性とにらみ合った。
女性はすぐにその場を離れたが、本気で来られたら危なかった。
こんなに大勢の場で、魔法をぶっ放すわけにはいかない。
女性が居なくなった後、光莉は泣いている子供の方に向き直り『見てて。』といった。
そのあと、子供はすぐに泣き止んだ。
その理由は、光莉は魔法を使ったからだ。
魔法を見せたのはそれが初めてではないようで、怖がることもせず、ただ見ていた。
周りには大勢の子供がいたが、特に気にするそぶりは見せなかった。
白「ねえねえ、ビー玉が割れる描写、あれさあ『踏み割られた瞬間、ビー玉はかすかな光を放ち、それはまるでその場の空気を切り裂くような瞬間的な輝きだった。しかし、それはすぐに消え去り、跡形もなく散った。』って感じにしたら?」
提案ありがと。でもだめ。跡形が無かったら困ります。
ナ「物語全体で何かキーとなる役割を持たせる予定があるの?」
ないですね。今のところ。
作「じゃあなんであんな不自然な動きを?」
それは……。……この話、もう一度一から読み直しなよ。踏み割られたわけじゃないんだよ。
ナ「へーえ?」(一応勘のいい大人)