42 遊園地のお誘い(殺人未遂を添えて)
「兄さん!」
兄さんは少し大きな声で言えばやめてくれたけど、もう少し遅かったらどうなっていただろう。
「ゲホッ! ゴホッゴホッ、はぁー、はぁー。ふー、陸助かったよ。ありがとう。」
「だいじょうぶ? というか兄さん! 何してるの!?」
佐藤が苦しそうにせき込む。その目には涙が浮かんでる。
どうして首を絞めていたのか、それが気になった。理由に寄っちゃ許さないからね~兄さん?
「いやー久しぶりに会ったかと思えば何? いまさら何の用?」
兄さんの目は本気だった。
こんなところでうそをつく人ではない。
兄さんは無表情のまま、ゆっくりと佐藤に近づく。
その目には確かな疑念が宿っており、その一挙手一投足が緊張感を生む。
「本当に、何の用なの?」
その顔は、笑ってすらいなかった。
完全なる無表情。でも、優斗さんのように完全に感情が読み取れないわけじゃない。
怖い。
「はぁー。仲良くして? これから仲良くしないといけないんだから。」
筮さんがこの場を丸く収める。
さっきの殺人未遂事件でお風呂で会った人たちの事など吹っ飛んでしまった。怖い他人より、殺されそうな知り合いを優先するに決まってる。
「はいはい、自己紹介しますかね、っと。」
そう言って葵が立ち上がる。
「僕は光流。みんなからは葵って呼ばれてる。そう呼んでくれたらうれしいです。」
そう言ってにっこりと笑う。
性別を女に変えた方がいいんじゃないだろうか。男にしとくにはもったいない。
「じゃあ次は私。光流…葵の双子の姉の光莉です。あだ名とかは特にないから、好きに呼んで。」
「はいはーい! 次はまーい。」
そう言って元気に手をあげたのは紗代さん。
「山田紗代です! よろしく!」
短い。次。
「双子の姉の、千代です。こっちは優斗。トラウマがあってしゃべれないから、覚えておいて。」
優斗さんがペコリと頭を下げる。
当たり前だが、耳は聞こえている。
「私も、筮です。基本的にここにいるから、用があったらここにきて。間違っても陸君みたいに、出口が分からなくなって、閉じ込められたらダメよ。」
佐藤が僕を見る。
教えないでほしかったなぁ……。
「俺は西村空。」
短い。
「知ってると思うけど一応。
西村陸です。えへへ……。」
ヤバい、自己紹介って恥ずかしい。
たぶん、顔赤いよね。(実際そう)
「じゃあ最後に、佐藤です。よろしくお願いします。」
下の名前は?
サ・トウさんなの?
「ねえ佐藤。下の名前って」
「あっ、そーだ!」
下の名前を聞こうとしたら、筮さんがパンッと手を叩くから聞けなかった。
「こんど、遊園地に行かない!?」
筮さんが持っていたのは、遊園地のチケット。それも人数分! …よく集めたな…。
作「陸の笑顔ってどんな感じ?」
ナ「確かに気になるかも!」
え、普通にかわいい。
ナ「…即答……。」
作「具体的にはどのくらい?」
ショタコンなら即食い。
作、ナ「えぇ……(引)。」
なるほど。では文章でお伝えしましょう。ゴホンッ(咳払い……だっけ?)
彼の笑顔は、まるで春の朝のように柔らかく、どこか無邪気な温もりがある。
目尻がほんのりと持ち上がり、頬がかすかに紅潮しているのが分かる。
恥ずかしそうに「えへへ……」と笑うその仕草は、あどけなさと優しさが混ざり合ったようで、見ているこちらまで笑顔になってしまう。
無邪気で、飾らず、何の駆け引きもない純粋な笑顔——それが西村陸の持つ、一番の武器なのだ。
……どう?
作「………………。」
ナ「逆に怖えよ。」