41 気配のないもの ××くんと○○君(あと酔っ払い)
「ごめんなさい…。」
ぶつかった人には謝っておいた。
相手は結構背が高かった。
ぶつかった相手はフラッっと倒れた。
佐藤はびっくりして一歩下がる。
なぜ顔が青いのだろう。
「大丈夫ですか!?」
「ああ、大丈夫大丈夫。そいつ、無駄に頑丈……そう簡単には死ねないから。」
そう言ったのは白い髪に緑色のメッシュの小学校高学年くらいの三つ編みフードの子供。
にっこりと笑って下から見上げてきて、一瞬女かと思ったが、ここにいるという事は男なのだろう。
白髪緑メッシュの子供は、にっこりと笑いながらも、その目にはどこか冷たい光が宿っていた。
「安心してください。ただの二日酔いです。」
脱衣所の隅で、黒髪赤メッシュの男が静かに立っていた。
その背中はどこか無機質で冷たい印象を与える。
彼は倒れた人物の首根っこを片手で引っ張り、力任せに風呂場へと運び込んでいる。
その動きは無駄がなく、異様なほど洗練されていた。
顔はよく見えなかったが、赤いメッシュの髪が湯気の中でかすかに光を放っている。
気配がないため、まるでそこに存在していないかのようだ。それでも彼の姿を一瞬捉えたとき、佐藤の背筋に冷たいものが走った。
その不自然な動きや気配の希薄さが、彼の人間らしさを否定するかのような感覚を佐藤に与えている。
風呂場に向かう後ろ姿は、どこか機械的で、謎めいた雰囲気が漂っていた。
倒れた人の扱いが雑だなぁ……。
佐藤の顔がもっと青くなる。
佐藤は背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。
目の前の人物たちは、まるで空気そのもののように存在感が希薄だった。
(どういう事? この人たち、気配がまるでない。
本当に人間? 後ろの人も、いつの間にか後ろにいて、姿を認識できなかった。)
佐藤に分かるのは、関わるべきではない事と、危険人物な事。
「陸! 早く行こう!」
「あっ、うん。」
佐藤を追いかけて脱衣所を出る。
本当になんなんだ?
「陸! 説明終わった?」
ドアのない部屋の前に行くと光莉がいた。
佐藤に軽く挨拶をして「見えないけど、ここが入口だから。」と言う。
「静かだったでしょー。私が魔法で作った異空間だよ。」
「そうなの?」
「まあめんどくさくなって途中で魔法やめちゃったんだけどね!」
「ふーん。」
疲れるのかな? …それより……
「水風呂冷たすぎ! 心臓飛び出したよ!?」
「大変、拾いに行かなきゃ~(棒)。」
芸能人なのに演技下手。
すごく棒読みなんだけど。
光莉の言葉はすごく棒読みで、逃げるようにこの場を走り去っていった。
「はぁ……もう!」
仕方なくドアのない部屋に入ると……あっ、入り口の場所やっと覚えたんだ!
兄さんが佐藤の首を絞めていた。
「ギャー!! 何してるの!!?」
兄さんが佐藤の首を掴み、地面に足がつかないほどの高さに持ち上げていた。力持ちだ。
「………………。」
兄さんの返事はない。
「……兄さん……?」
作「もしや、××くんか?」
ナ「もしかして、○○君?」
どっちが?
作「赤メッシュが××くん。」
あたり!
ナ「白髪緑メッシュが○○だ!」
あたり! よかった―伝わって。
作「え、じゃあ二日酔いは?」
変なあだ名付いてる。