37 過去にとらわれる影
この話はBL要素を含むかもです。
この先は結構BL要素多いかもしれない。それでも大丈夫、という方だけ、お進みください。
佐藤ビジョン
陸が黙り込んでしまった。
まずいことを言ってしまっただろうか?
「あッ、あの、陸…?」
「知っていた?」
陸が下を向いたまま静かに言った。
思わず「…ぇ?」と返してしまった。
気配のない人間(光莉)も驚いたが、そんな質問されるのも、こんなところに入らなくちゃならなくなるのも驚いたな。
知っているか知っていないかで言えば、知っている。
(思い出せるなら思い出して、ちゃんと理解してください。
あなたは、皆に見られる立場なのですから――。)
戻るはずのない過去になんか縋らず、ちゃんと現実を見てください。
でも、それが必ずしも、貴方を楽にするとは限らない。
だとしても、今の陸は、存在すべきではない――。
陸ビジョン
「あッ、あの、陸?」
「知っていた?」
「…ぇ?」
被せ気味にそういえば、佐藤は戸惑いの顔を見せる。
「さっきの言葉の事。知ってる?」
「??? ッえーっと……?」
「知ってるなら、教えて。」
「ふぇ!?」
圧をかけて、グイッと距離を詰める。佐藤は一歩後ろに下がる。
後ろに下がる一歩より、僕の距離を詰める一歩の方が距離が長いから、逃がす心配はない。
僕よりも佐藤の方が若干背が低いから、佐藤に僕の影がかかる。
近くで(よく…いや、よー……ッく)見ると、まつげが長くて肌もきれいだ。
全体的なバランスも整ってる。さぞモテただろうに…。
女性トラブルもあっただろうな……大変そう。
僕が佐藤を観察? しているとき、佐藤は僕の後ろを見て「ひょえぇ…」と言った。
その時佐藤は、
(余計なことを言うなオーラこえー……)
と思っていた。
佐藤は後ろに一歩下がり、僕と距離をとる。
佐藤がグッと何かを決意したような目でこっちを見た。
「……陸…。ごめん!」
「…へ?」
びっくりした。まさか謝ってくるとは思わなかった。…もしや罠!?
困惑する僕に、佐藤は言葉を続ける。
「本当はいじめなんてしたくなかった。
でも、ある日、ちょっとトラブルがあって、俺は……」
佐藤は何かを言おうとしていた。
次に出るであろう言葉を、大体予想できた。
「………陸をいじめれば、いじめないと言われて……俺が、陸に話しかけたから!
…ハハ……自分勝手だよね…。」
佐藤は言葉を濁した。
でも分かった。佐藤はいじめられていたんだ。
前居た学校は治安が悪かった。
いじめなんてそこら中にあった。あの学校の基準で考えれば、大して珍しいことじゃなかった。
「そんなことが…!?」
あったんですー…じゃないよね?
「はい、この設定を考えたのは、何を隠そう、わたくしです。」
でももう少しシリアスになる設定を考えたのは私だねー。
「ひど…」
お前もな?
「というか、佐藤ビジョンは初めてかな?」
そうだねー…最初の方は謎が多くて、その謎の一部を知ってる佐藤くんビジョンはむずいんだ―
「大変ー」