33 意外と気まずい
「ああ、言ってなかったっけ。この人の名前は…」
「忘れるわけがない! 佐藤しゅなんとかだ…!」
僕は佐藤から距離を取る。その時のポーズは右手で顔を覆い左手を前に出すという漫画とかでよく見るポーズだ。(中二病ポーズ)
光莉は「しゅなんとか?」と言っていた気がする。だが今はどうでもいい。
どうしてここにいるかの方が重要…!
「なに? 中悪い? 知り合い?」
「一応。」
「ていうかなんでこんなとこで寝てるの? 行倒れ?」
「違うと思う。」
よく見ると、前よりも傷が増えてる気がした。
アブナイ遊びでもしてるんだろうか?
「……ねえ陸、佐藤君…死んでるんじゃない?」
このセリフは佐藤を心配してのセリフではなく、面白がってのセリフだ。
その証拠に、顔がニマニマしている。
「え? いや死んでないでしょ。さっき息してたし。」
してたし、と過去形にしたのは苦手だから。
佐藤が起きたら嫌でも空気になると思います。
「うーん、息はしてるけど全く動かないし気づきもしないし…。よし。」
光莉はそう言って立ち上がり、笑顔でこう続けた。
「蹴ってみようか。」
「いやダメでしょ。」
「えー。」
明らか残念そうな反応!
ただでさえ怪我してるし、これ以上罰を与える必要はないと思う。もし危険な遊びでの傷だったら自業自得だけど。
それに、僕の家族に危害を加えたわけじゃないし、ちょっと恨んでるけど、殺そうとするまでじゃない。
距離を取って静かにしていればいい、そんな状況になったのに、わざわざ壊すなんて…。
僕は一回ため息をつく。
「えー、とかじゃなくて、普通にダメだから。誰もいない時だけ急にキャラ変わるのやめて。」
眠ってるとはいえ一般人の佐藤がいるんだから。
「じゃあ殴る?」
「それもダメ。ストレス発散したいだけでしょ。」
佐藤を挟んで言い合っていると、佐藤が「んー……。」と声を出した。
いったん僕と光莉は佐藤を見て、また言い争う。
もちろん、少し声を小さくして。
「うるさくするから起きちゃうじゃん。」
「光莉だってうるさいじゃん。」
「人のせいにしないで!」
「んー、うるさい!」
――ゴンッ
佐藤が急に起き上がるから僕頭に佐藤の頭がぶつかってしまった。
「ぃった!!?」
「っ! っつ……………!」
「二人とも大丈夫!?」
「誰だお前ら!」
「どこがだいじょうぶに見えるのか教えてよ!」
僕は光莉に向かって叫ぶ。
佐藤はひたいを押さえながら光莉を見て距離を取る。年下の女子が苦手とは本当なのか。
続いて佐藤は光莉の反対側にいた僕にぶつかる。
そして僕の存在にも気づき、さすがにいくらか後ろめたさがあるのか一瞬驚いた顔をしてから気まずそうに下を向いた。
「………………。」
「………………。」
気まずいなぁ。
僕と佐藤の沈黙を破ったのは光莉。
「あ、そうそう、伝え忘れるとこだった。佐藤君のお母さん、お風呂行ったよ?」
「………ぁ、そう。」
ねえ作者。
「なに?」
今更だけど、どうして中学生の陸が働く、って設定つくったの?
「まあ、監視のため。姉にじゃあ高校生じゃないとねって言われたんだけど…私も高校生からじゃないと働けない、ってことくらいわかってたけど、高校生なんて書けないので中学三年生になったってわけ。」
まあ…よくわかんないわ。