288 真実【2】
その日は何事もなかったように寝て、朝起きた。
しかし、一晩寝て頭が覚めたのか――
(とんでもないことをしてしまったのではないか)
朝起きて一番に思ったのはそれだった。
親に相談すべきか。いや、今相談すればさらに見放される。
それが怖くて、何も言えなかった。
・・・
このお金、どうしようかなぁ……。
手渡された一万五千円を手に、昨日の過ちを思い出す。
もうあんなことしない。この事は墓まで隠し通す。
そういえばこの前、スマホで可愛い髪飾りを見たな。でも高くて買えなくて……。
「……こんなお金、手元に置いておきたくもないし、早めに使った方がいいよね……」
私は迷わず、その髪飾りを注文した。
・・・
その次の日、弥月さんの事で、うちの親と鏡さんのご両親が話し合いをするらしい。
私ももちろん、連れていかれた。
しかし、話し合いの場は追い出された。大人の事情があるらしい。
(……あの事を、言った方がいいのではないか?)
ちょうど今、鏡さんと話せる状況にある。
私は勇気を振り絞って、「あの……」と声を出した。
・・・
鏡さんは、別の部屋を用意してくれた。この方が私も相談しやすいし、正直ありがたい。
それでも、相談しずらいことは変わらなくて……。
数分間、特に会話もない時間が続いた。
彼の方から話を切り出されることもなくて。
(ああ……本当に、私、誰にも必要とされてないんだ)
そう、気づいてしまった。
目頭が熱くなる。視界がぼやけて、何とか気持ちを押さえようとしても無理で。
「――あのっ!」
そのまま、感情に任せて声をあげた。
急に大きな声をあげたことを驚いたのか、鏡さんは目を見開いていた。
私、私……昨日、なんてことをしてしまったのだろう。
してしまったことは変わらない。だから、もう二度とあんなことはしないから……!
――私を必要としてよ!
「私っ、二日前公園で――」
……ダメだ。涙を我慢できない。それでも、これだけは言わないと――
そんな思いで発した言葉を、彼は思いもよらない言葉で遮った。
「その髪飾り、綺麗だね」
……えっ?
混乱が抑えきれない。どう答えるのが正解なの?
それでも、私はこの時、認められた。褒められた。
――あんな形で手に入れたお金で買った物だとしても、認められたのが嬉しかった。
「……そう、ですか。ありがとうございます。結構高かったので、しばらくはお財布すっからかんですけどね」
とりあえず、混乱を隠して、無難な返事を返す。
一旦微笑んで、相手の返事を待つ。
しかし、いくら待っても――鏡さんからの返事はなかった。
・・・
家に帰って、自室で勉強をしていると、鏡さんとの会話を盗み聞きしていた崇さんから聞いたのか、両親が嬉しそうに話しかけてきた。
「凪、鏡さまに褒められたんだって?」
「……ぇ」
親から褒められた。よかった、心配をさせるな、と。
自分勝手。その言葉が一番似合う言葉だった。
それでもその時は、親に認められたことが、何よりも、嬉しかった。
……でも、この髪飾りだけじゃ、そう長く褒められることはないだろう。
常に上を目指さなきゃ。
「――そのためには、もっとお金がいるの」
沈みかけの太陽が私を照らし、顔が赤く染まる。しかし、その表情は無のまま。
サアァ、と風が吹き、草木が心地よい音を奏でた。
「……だからおじさん、おこずかいちょうだい」
公園のトイレの影。建物の壁に寄り掛かったままタバコを吸う脂性のおじさんに声をかけ、私はトイレの陰に足を踏み入れた。
私はこの話が書きたくて書きたくて、数か月前から瞼の震えが止まらなかったんだよ。
ナ「それただの瞬き――ってちょっと待って? じゃあこの話思いつく前までは瞬きしてなかったってこと?」
……(無視)で、この話を読んだ感想は?
白「おじさん最低だなってこと? まあでも、ロリコンが全員ヤバいやつとは限らないけどね」
作「私もそう思うけど、この話を書けるキキも怖いなって思う」
作者ちゃんひどぉい(笑)
作「ヤメて? 鳥肌立つ」
……泣くよ?(笑)




