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279 夕焼け空を焦がすほどの


「――ねえ、鏡くんの目は、綺麗な赤だよね」


「……そう?」


「そうだよ」


「俺は嫌いだけどなぁ、この目」


「なんで?」


「……分かんないけど、嫌いなんだよ」


「そっかぁ……じゃあ――」


 弥月は目に涙を浮かべて言った。


「――私の目も赤だったら、こんな目に遭わずに済んだかなぁ……?」


 気持ち悪い。弥月はそう思いながらぼやけた視界に移る鏡を見る。

 涙をぬぐいたくともそれはかなわない。なぜなら今、両手は鏡によって塞がれているから。


・・・


「……どうだった?」


 公園のフェンスに寄り掛かりながら、鏡は弥月に聞いた。

 弥月は今、公園の水道水で目を洗っている。


 弥月は水道水で濡れた顔のまま振り返る。


「……何が?」


「何がって……」


 鏡はハハッと乾いた笑いを浮かべた。


「目をなめられる感覚だよ」


 弥月はキュッと水道の蛇口をひねり、水を止める。

 そして、鏡に向き直った。


「最悪だった」


「……正直でよろしい」


「鏡くんは? 目をなめた感覚は? ――おいしかったの?」


 無表情で聞く弥月に、鏡は微笑んで答えた。


「いいやぁ?」


 味なんてなかったよ、とでも言うように怪しげに、微笑んで見せた。

 弥月は逃げるように、濡れた顔も拭かずランドセルを背負い、鏡に背を向けて歩き出した。


「どこ行くの?」


 鏡が声をかけると、弥月はぴたりと立ち止まる。


「家に帰る。……ママ、帰って来てるかもしれないから」


 兄が心配なんだろう。もし母親が帰ってきていれば、と考えると、そうなるのも無理はない。


「またね」


 そう微笑んで小さく手を振った。

 弥月は一瞬こちらを見たが、何も言わずに速足で去って行った。


 そんな弥月の背中を見送りながら、鏡は小さくため息をついた。


「俺もそろそろ帰るかなぁ」


 真っ赤に染まった夕焼けを見上げる。

 その夕焼けは空を焦がす。それは鏡の目のように、そして、鮮やかな血潮の緋色のように――。


・・・


 次の日、弥月は学校に来なかった。昨日のことがショックで休んだのか、それとも――


 と色々な考えを巡らせていた時、教室のドアが開いた。

 担任の先生が重苦しい表情で入って来て、クラス中頭に疑問符を浮かべる。


 そして教師は数秒黙った後、その口を開いた。


・・・


 弥月が死んだそうだ。


 交通事故。一言に言えばそうだった。警察によると、自殺の線はないらしい。

 事故の現場が映った監視カメラを見ても、横断歩道を渡っていた所に飲酒運転の車が突っ込み、重症。救急車で搬送されるも、搬送先の病院で死亡した。


 自殺だとか事故だとか事件だとか、いちいち考えることがめんどくさかった。


――桜井弥月さんが、昨夜交通事故で死にました。


 そう言われた時も、

(ああ、そうなのか。だからいないんだな)

 くらいにしか思わず、次に考えたのは……じゃあ、これからもうあの目は見られないのか、という軽い感想。我ながらクズだと思う。


 そしてそれからしばらく経ち、彼女の葬式に呼ばれた。


白「およ……っ! 弥月ちゃん死んじゃったの?」

 そうですね。あの、私今テンション低いのでちょっと酷いこと言うかもです。

ナ「これが……桜井家の呪い……!?」

 黙れよ。まあ確かに、弥一の双子の妹は被害者で、さらにその弥月のいとこの息子の漆雅は猫殺し常習犯。呪われてるね(笑)

作「ちょっとひどすぎるよそのカッコ笑!」

 そうかなぁ? この双子も不憫だね。だって二人とも不憫な死に方してるもんねっ(ニコッ)

ナ「弥月ちゃんに対する救いを要求する!」

 ……その救いを与えるために、死者の安らかな眠りを邪魔するの? それって、この物語では大罪だよ?(無表情見下ろし)

ナ「グッ……」

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イイネ等、よろしくお願いします。 え? なぜかって? しょうがないなぁ、そんなに言うなら、教えてあげないこともないですよ。 モチベにつながります。
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