277 すっからかん
それから数日後、俺の親と凪の親が(おそらく弥月の事で)話し合いをするらしい。
当然、親の付き添いで凪も来る。両親に話し合いの場を追い出された時、凪も同様に部屋を追い出されていた。
「……あの」
珍しく、微笑むわけでもなく無表情で少し離れたところに立っていた凪は、遠慮がちに話しかけてきた。
「私……その、相談が、あって……」
目を泳がせながらそう言った凪を別の部屋に連れて、その相談とやらを聞くことにした。
二人しかいない別室で、数分間無の時間が流れていた。
俺は特に話すこともなく、頬杖をついて今日の学校の授業を思い出していた。
「あのっ!」
急に凪が声をあげたので、思わず目を見開いた。
どこを見つめていたわけでもない目線がようやく凪をしっかりと捉え、俺はようやくあることに気が付いた。
「私っ、二日前公園で――」
「その髪飾り、綺麗だね」
切羽詰まった表情で何かを告げようとした凪の言葉に被せて放たれた言葉に、凪は「……えっ?」と首を傾げた。
凪の頭には綺麗な花の飾りがついた髪飾りが付けられており、思わずそっちに目が行った。
別に褒めたことに他意はない。普通にきれいだなと思った本心を告げただけだ。
それに、その髪飾りが弥月に似合うと思ったから、心の中で思うだけではなく声に出た。
口をポカンと開け、混乱している凪をよそに、俺はその髪飾りを付けた弥月の姿を想像していた。
(……いや、あの髪飾りの色は弥月の目には合うかもしれないけど、髪色とは合わないかもな)
首を横に振って、未完成の妄想を打ち消した。
「……そう、ですか。ありがとうございます。結構高かったので、しばらくはお財布すっからかんですけどね」
そう言って凪は、やつれた顔で微笑んだ。
そして数秒、沈黙が流れる。
俺はなんだか妙な気配を感じるな、と思い周りを見渡した。
すると、崇兄上が聞き耳を立てているということに気づいた。
「兄上!」
「気づくのが遅いよ鏡」
兄上はぎろりと睨んできた。
少し腹が立って、苛立ちを隠せないまま「何の用ですか」と聞くと、兄上は
「いや、特に用はないんだけど凪ちゃんの切羽詰まった感情の気配を感じ取ってね」
と笑った。
何だ感情の気配って。
「じゃ、婚約者様にそんな感情抱かせないようにねっ!」
そう言い残して、兄上は走り去っていった。
「……何だったんだ」
思ったんですけど、なんで映画や童話の継母って悪役ばっかりなんでしょうね?
作「……あっ、確かにそうかも!」
白「思い出してみればそうかもね……必ずしもそうだとは限らないのに」
ですよね! だから、継母がいい人の話もあったらいいのになって思うんですけど、もしかして私が知らないだけであるのかな? 継母が悪い人ばかりだと、子供に偏見を与えちゃいますよ!
ナ「……俺は、生みの母親が俺生んだ時に死んだから、弟の親が実の親って感じだけど、いい思い出ないよ?」
およ?
白「私も。私の場合は実の親が兄にとっての継母だったんだけど、兄に意地悪するから母はあまり好きじゃない」
あらららら? ……私も、映画の偏見の餌食だったかも(笑)




