263 そんな問題分かるわけ……
「ん……」
僕は、頭が重いという感覚に包まれながら目を覚ました。
起き上がると、ベッドにもたれかかった状態で海斗が眠っていた。
立ち上がって、部屋を出る。
頭痛い……。でも、少しはマシになったかな?
一階を見ると、そこでは佐藤と桜さんが並んで何かをしていた。
「………………佐藤、何してるの?」
声が小さくて聞こえなかったかなと言ってから思ったが、佐藤はちゃんと聞き取って振り返った。
「……ああ、陸。桜さんに勉強を教えてるんだよ。その方が生きやすいだろうし」
佐藤は一瞬桜さんの方を見る。
すでに死んでいる桜さんに『生きやすいように』と勉強を教えるのは、なんとも佐藤らしい。
僕は階段を下りて二人に歩み寄った。
「桜さん、何の勉強してるの?」
「はい! 算数です!」
「うっ、頭痛いから、あんまり大きい声は出さないで」
頭を押さえてそう言うと、桜さんは「ごめんなさい」とつぶやいた。
すると、隣にいる佐藤が僕に言った。
「でも、覚えが早くて助かるよ。地頭はいいみたいだし、最初の方は間違いが多いこともあるけど、一度指摘すれば同じミスをすることはほとんどない」
「どうでしょう? 私はなんとなく、この辺の計算は教えてもらえば分かります。でも、継続的にやらなければ忘れてしまいそうです」
桜さんは佐藤の言葉を継いでそう言った。
確かに、僕はたまに使わない計算や単位を忘れたりするかな。
分かりやすいのはデシリットル。どこで使うのあんなん。
忘れてるって言ったばっかりなのに覚えているのは、前読み返した昔の日記に、その単位が書いてあったから。
僕は意地悪で、少し難しい問題を出してみることにした。
「じゃあ桜さん、5+3-2+4-6=?」
「………………ふぇ?」
「あ、ごめん。紙に書くね」
ちょっと早口だったかな? と思い、佐藤から鉛筆を受け取って紙に書く。
すると桜さんは少し考えた後、紙に少し曲がった字で『4』と書いた。
「正解!」
「じゃあ次は俺から」
佐藤がそう言ったので、佐藤は紙に『たろうくんは5こおかしをもっていました。3こたべて、2こもらいました。 いま、たろうくんはなんこもっている?』と書いた。
「4!」
「じゃあ、次は俺もいい?」
後ろから、少し苛立った声が聞こえた。
振り返ると、そこには海斗が立っている。
「問題。桜さんは林檎を三個持っていました。 陸さんが二個あげて、桜さんは一個食べました。 今、桜さんは何個持っている?」
「えーっと? ……三個、二個、一個……」
桜さんは指を折って考える。
「4……?」
不安そうにそう言った桜さんに、海斗はつまらなそうに「正解」と言った。
思わず浮かぶ笑いが声に出て、リビングを暖かい空気が包んだ時、高く、冷たい声がその空気を切り裂いた。
「問題、ある数に三をかけて五を足して二で割ったら七になりました。そのある数は? ……なの」
……なんて?
早口で言われて、僕は一瞬固まる。
その声は階段の方から発せられたもので、階段の方を見るとそこには、彩華さんが立っていた。
「……三を……かける? 割る?」
桜さんがそうつぶやく。答えは三だけど、そんなの絶対分からないって!
桜さんは指を折って真面目に考えているが、数秒して頭から煙が出ている幻覚が見え始めた。
そういえば、今日お昼ご飯に鍋で煮て作るタイプのうどんを作りました。
ナ「どんなタイプ? 普通のうどんも鍋で煮るよ?」
…………
ナ「キキ? 笑顔でフリーズしないで?」
まあそれはいいとして(笑)
ナ「おい!」
白「まあまあ喧嘩はじめないで」
作「ちゃんと聞くよ? ね?」
まあ作る過程は飛ばします。
ナ「なんなん?」
それで、うどんをドンブリによそうためにお玉とトングを手に取りました。それで思ったんですけど、(お玉とトングって……どっちが盾でどっちが剣だろう)と。
作「……ごめん。もうキキの見方はできないわ。スゥ―――(息吸い)……何考えてんの!!?」
白「どっちも剣じゃない?」
そうなんですよ。それで家族に聞いたら、どっちも剣、もしくはお玉が盾、という結果になりました。みんなはどう思う? コメントしてね!」




