254 狐の窓から見えたのは
「ただいm――」
「おかえりなさーい!!!」
僕が家のドアを開け、リビングに入った瞬間、桜さんの猛烈アタックでひっくり返りそうになった。
ひっくり返りそうになった――のを、なんとか踏みとどまり、「た、ただいま……」と苦笑いが浮かぶ。
「全く……。お帰り、陸」
「おかえりなさい、なの」
リビングで兄さんが頭痛を押さえるように首を振っていた。彩華さんはいつも通りの無表情。
その横で飛ぶ白い蝶は、こちらを呆れたように見ている気がした。
・・・
「狐の窓?」
僕は荷物の片づけをある程度終えてから、桜さんに聞いた。
「いいえ、知りません。やったこともないです」
そう言うので、僕は狐の窓を作って見せると、桜さんは目を輝かせながら早速やっていた。
キラキラした目で狐の窓を覗いてみる。僕は桜さんの第一声は何かとワクワクしていた。
「……ぁ」
すると、桜さんは目を見開いて、狐の窓から目をそらした。
「どうしたの? 桜さん」
「いや……別に」
珍しいな。桜さんがそんな事言うなんて……。
何か変なものが見えたのかと思い、僕も窓を覗いてみる。家に変なものが居たら嫌だなあという不安を感じて。
でも、見えたものは教えてもらったバスの中とほぼ同じ。
窓の中は薄暗い灰色の風景が広がる。
ソファーに座って漫画を読んでいる兄さんは少し黒い。妖だからだろうか。同様に、七不思議の桜さんと彩華さんも黒……兄さんよりもドズ黒い色だった。
この二人は、兄さんのように周りが少し黒く染まっているのではなく、存在自体が黒い、影だけの存在だった。
死者で怪異の桜さんは分かる。彩華さんはもしかしたら、七番さんによってつくられた本物の生き物ではないからなのかもしれない。
だとすれば白銀さんも黒いはずだが……この空間の中で、白銀さんだけが白く光り輝いていた。
なぜだ……? そう思っていると、いつの間にか移動していた彩華さんにポンと肩を叩かれた。
「もうやめにするの」
「っ!?」
白銀さんに集中していて彩華さんが見えていなかった僕の肩は驚きで跳ねる。
でも彩華さんはそんなこと気にするそぶりもなく桜さんに向き直る。
「六番、隠さずに全部伝えてもいいんじゃないの? ここはこいつらの家なのだから……なの」
こいつらって……。
僕は少し呆れた。まあでも、彩華さんはこういう人だよね。
「……わかり、ました」
そう言って、桜さんは話し出した。
ナ「さあさあ、じゃんじゃん語ってくれ江見桜子!」
まあ、ナレーターさんは怪異に関してはあんまり知らないのか。
作「あれ? 珍しく『変態』とか言わないんだ。黙れロリコン、とかいうのかと思った」
白「確かに。ロリコンだったら変態って言われても辻褄合うよねぇ~」
そんなネタバレはしないし、そんな事実もありません。
ナ「ズバッと言うのはいいけど、こんかいギャグ要素なくない?」
ギャグを書くテンションにはなれなかったということです。
白「どしたん?」
作「話聞くよ?」
いいです。間に合ってます。




