251 自由時間
自分勝手な理由だけど、なんか気分乗らないんだよなぁ……。
よし! 修学旅行編はもうすぐ終わりにしよう! あとは桜井様に弥一のことが聞けたらこの修学旅行編終了だ!
夜・・・
自由時間だった。
部屋にいると佐藤に叱られるので、こうなったら、と思い、トイレに行くと嘘をついて、外に逃げ出した。
外と言っても、室内だ。
僕は正直言って、桜井捌夢を探していた。
弥一について、聞きたいことが山ほどあった。だがまず、彼が弥一を知っているかどうかを確かめる必要がある。
弥一(に関しての情報源)を探して十五分。彼を見つけた。
彼は一人、夜の暗い空の下に立ち、雲の多い空を見上げていた。
少し冷たくなった風が僕と彼の肌を撫で、髪が風に従い流れる。
僕は彼を見つけてすぐ声をかけようとも思ったとき、足が止まり、口も開かなくなった。
喉の中で、出かけた言葉が渋滞を起こしていた。
空を見上げる彼の表情は緑色の髪に隠れて見えなかったが、彼の周りに空気は彼の何とも言えない雰囲気に侵されていた。
ほどなくして彼は、空から目線を落として地面を見た。
彼の右手に握られているスマホを握る手に力を込めたというのはなんとなくわかった。
その雰囲気に、僕は謎の懐かしさと、安心感を覚えてしまった。
一瞬、彼に誰かの姿が重なったが、思い出すことを本能が拒否した。
――ズキッ
頭が痛んで思わず、「いつっ……」と声が漏れた。
彼とは七メートルほど離れていたはずだが、声が聞こえたのか彼が思い切りこちらに振り返った。
その行動を見た瞬間、頭痛は収まった。
「……ぁ、西村先輩?」
桜井さんは少し驚いたようだったが、あまり表情は変わらなかった。
「ごめん、驚かすつもりはなかったんだけど……。桜井さん、なんでここに?」
「……………あの」
桜井さんは、右手に持っているスマホをポケットにしまった。
僕は「何?」と返すと、桜井さんは一度「いや……」とつぶやいてから黙り、数秒してから顔をあげた。
「先輩こそ、どうしてここに?」
「ああ、桜井さんに聞きたいことがあって」
「? 何ですか?」
僕は弥一さんの事に関してどうやって聞こうか迷い、質問の答えになるべく間を開けないように他の事を口にした。
「……桜井さんは左利きなんだよね?」
「……うーん……どうしてですか?」
桜井さんは少し、警戒した様子にも取れた。
聞き手の話題に関してもパッと答えてくれないのだから、もしかしたら弥一さんに関しても一筋縄では答えてくれないんじゃないだろうか?
「お箸を右手で使っていたのと、スマホを右手で持ってたからかな? 僕は右利きだからよく分からないけど、スマホは聞き手で持つものじゃないの?」
そう聞くと、桜井さんは僕を無表情で見つめた。
数秒僕を見つめた後、本当に小さくため息をついて、静かに答えた。
「右利きでした。でも小六の時にちょっとした事件がありまして。なのでほぼ左利きのようなものになったのですが、やっぱり箸やスマホの癖は簡単には抜けませんね」
その事件とやらも少し気になったが、その好奇心に蓋をする。
本格的に警戒され始める前に、本題に移りたかった。
「あ、あともう一つ聞きたいことがあるんだ」
「っ……まだあるんですか?」
「質問が一つしかないとは言ってないよ」
「………………」
そう言うと、桜井さんは思いだすそぶりを見せてから、それもそうですね、とあきらめたように言った。
「それで、質問とは?」
「ん、ありがとう。じゃあ――」
僕は覚悟を決めて、その一言を放った。
「――桜井弥一、って人、知ってる?」
ナ「やっぱり別人なんだな……」
うん。私は今この瞬間、ナレーターさんや白銀がネタバレするかもしれないと思うと頭痛がするよ。
白「ネタバレ防止精神……製作者としての本能が拒否してる!?」
作「それにしてもナレーターさんはよくグルグル巻きにされるのに、白銀はあんまり被害に遭わないよね」
白「確かにそうかも」
そうだね……。まあでも、物語が冬に入ったらいずれ白銀もグルグル祭りになるよ。多分ね。
ナ「じゃあその時には俺もグルグルにされないで済むかなぁ?」
どうだろう? 場合によっちゃなるかもしれない。
ナ「ねえなんなの!? 俺そんなにキキに恨まれてた!? 憎いから俺の事苦しめるんでしょ!?」
うーん……どうだろう?




