23 地下室
済
二千文字になっちった☆
千代さんから説明された魔法についての要点。その内容は、
1 誰にも言わないこと。
「まあ、言えないようになってるんだけどね。」(By紗代)
2 深く首を突っ込まないこと。
「少年や妹たちはヒーちゃんたちの不注意で仕方なくだからね。」(By紗代)
3 監視のためにここで働くこと。
「本人に監視って言うのどうかと思うけどね。」(By紗代)
とそこで、「ちょくちょく口を挟むな!」と、千代さんが紗代さんにチョップをくらわせた。痛そう。
・・・
「これで全部。」
「意外と少ないんですね。魔法の無いようだから、もっとなんか、外部に漏れないように……とか、重苦しい内容化と思ってました。」
「そんな物騒な」
「あ、でも……監視で働くってことらしいですけど、僕まだ働ける年齢じゃ……」
中三だし。まだ義務教育だし。
今春だから、一年待って。
「それに関しては心配しなくても大丈夫。いざとなったら魔法で年齢も変えられるし、友達の家に遊びに来て仕事を手伝ってるってことにしたり、まあ、今のところ、人手は足りてるから、ボーっとしてても大丈夫。」
「そうなんですね。」
少しホッとする。千代さんが丁寧に説明してくれたおかげで、大体わかった。
ただ……
「人手が足りてるって、ほかの人は……」
人間なのか? そんな不安交じりの質問を悟ったのか、千代さんはにこりと笑って言葉を付け足した。
「人間がほとんど見たいだけど、一応一部の人は魔法が使えるっぽい。見たことないけどね。」
「そうなんですね。」
その時、ほっとしたのかどうなのかは、自分でも分からない。
「えーっとぉ……たぁしかこの辺だった気がするんだよなぁ……。」
紗代さんが眉をひそめながら引き出しに丁寧に詰められていた布を引っ張り出す。
「ちょぉっとだけ待ってね少年! すぐ見つかるはずだから!」
そう言ってまた、雑に男性着物を引っ張り出す。
僕と紗代さんの周りの床には、引き出しからから引っ張り出された男性着物がぐちゃぐちゃなったまま放置されている。
「紗代さん……さっきから何探してるんですか?」
本心でそう聞くと、紗代さんは「はあ~ぁ?」とため息のようなものを出して振り返った。
「今まで知らずにそこにいたのか? 少年。妹が今探してるのはな、少年が着る服だよ。ふ、く!」
少し苛立っているみたいだ。なんか変なこと言ったっけ?
過去の行動を思い出してみても、心当たりはない。
「というか、ここは……」
壁や天井に視線を滑らせる。
大きい部屋だ。しかも一面引き出しだらけ!
「そりゃもちろん、地下室。」
「地下室!?」
さも当たり前かのように淡々と告げる紗代さんとは対照的に僕は、地下室なんか作ったのか、と固まっていた。
「ああ、安心して? 魔法で作られてるから壊れることはないよ。……少年、怖いの~?」
「ん~……まあひとまずそういう事にしておきます。」
※弁解がめんどくさくなった。
紗代さんが「あったあった。これ! ……の、はず。」と引っ張り出したのは、一見周りと同じに見える。
僕は、なぜそれにこだわるのか気になった。
「その着物は、他のと何が違うんですか?」
「………………。妹が知りたいよ。少年。」
飽きれたような目で見られ、少しムッとする。
「はあ? じゃあなぜそれにこだわるんです?」
「筮さんに借りたアイテムが光ったから。」
そう言って紗代さんが見せてくれたのは、宝石のようなものが付いたネックレス。
さっき紗代さんが取り出した服に近づけると青く光ってきれいだった。
綺麗だ……と見とれているとき、紗代さんが次に放った言葉でハッと我に返ることになる。
「それ、筮さんのお母さんの形見らしいから、大切に扱ってね☆」
「……はっ?」
思わず固まる。頭が真っ白になる、とは、まさにこの事か。
「さ、さ……」
「ん? どうした少年。さ?」
首をかしげて顔を覗き込む紗代さんに対し、ついに堪忍袋の緒が切れる音が聞こえた。
「先に言えーーーっ!!」
「ごめーん。」
紗代さんはアハハと笑い、軽く謝った。
+++
「すごーい! 似合ってるー!」
「似合ってるよぉー。少年。」
『『似合ってるよ。陸。』』
千代さんと紗代さんが別々に口を開き、ビデオ通話で光莉と葵が声をそろえて言う。
声がそろうとか、葵と光莉は、やっぱり双子なんだなあ……。
……でも、千代さんと紗代さんはあんまり似てないよなぁ……二卵性なのかな?
光莉と葵は一目でわかる一卵性だ。
違うのは髪型と髪色、目の色くらいか?
「あの、この着物は、他と何が違うんですか?」
僕がそう聞いても、みんなは首をかしげるだけ。
「なら何で……。」
「材料よ。」
筮さんの形見が光ったのだろう? そういうより前に、口を開いたのは――
『……筮さん。』
画面の向こうの葵が口を開く。
「え……材料って……?」
僕がそう聞いた時一瞬、筮さんが目を見開いた。
でも、
「……説明されたんじゃなかったの? 深く、首を突っ込まないで。」
そう言った筮さんの顔は険しくて、千代さんや葵たちですら見たことなかったらしく、優斗さんを除いてみんな、驚いたような顔をしていた。
肩こった。
「…え?」
肩こった肩こった肩こった肩こった肩こった肩こった肩こった肩こった肩こった
「わかった。わかったから!」
あんたはいいよね。ヒック、若くて、ぴちぴちで、肩こりなんて…うあーー!!
「あーあ、泣いちゃった。」




