22 代打
済
「池、池はーっと。」
僕はあの果たし状(?)の通り、昨日の神秘的な池の近くに来た。
「おーい」
すると、後ろからいきなり声をかけられて、思わず肩が跳ねる。
「お! あの子たちが言っていたのは君かな? 少年。」
勢いよく後ろに振り返ると、そこに立っていたのは、この旅館のスタッフ? の人が来てる和服を着ている。
この人が例の……代打?
「めっちゃ肩跳ねた……って、昨日めっちゃうるさくしてたあの人……!?」
「………………。」
と、池の方から声がしたのでまたまた勢いよく振り返る。
一人は、昨日会ったこめかみが長い眼鏡の人。
木の上に立ち、驚いた顔でこちらを見ている。驚きたいのはこっちだって話しますか? いやそれより、どうやって着物で木に登ったんだ?
一瞬しか聞こえなかった……というか、ほぼ聞こえてないに近かったけど、もう一人くらいいるような……。
もう一人の声の主を探して、きょろきょろしていると、声が木の方から聞こえてきた。
「ッづあ゙ーー!!!」
「優斗!?」
いきなりガサガサッと音がし、木の上から謎の人影が落ちてくる。
その人影は、例の眼鏡の人に、優斗と呼ばれていた。
「あはは! ゆーとどーしたのー?」
「紗代!」
紗代と呼ばれた女の人は木の上から落ちてきた優斗と呼ばれる男の人を指差し笑った。
そして、眼鏡の人が怒って紗代さんの方にあゆみよる。
あっだめだ。この調子じゃ自己紹介にめっちゃ時間使う上に僕が空気になる!
心なしか今体が半透明になってる気さえする。
「あ、あの!」
「「え?」」
思い切って声を出すと、紗代さんと眼鏡の女性の声がそろった。顔もどこか似ているし、姉妹なのかな?
でも優斗さんは気にするそぶりもなく、無表情のまま池を眺めている。
何を考えているかわからない人だな……。
「初めまして、西村……陸です。よろしくお願いします。」
ぺこりと頭を下げる。僕から始めないと自己紹介すら始まらない。
「こんなかしこまらないでよ少年。」
名前が分からないから少年と呼ぶのかと思ったけど、名前を教えても少年呼びらしい。
明るい笑顔を見て一瞬、犬の耳と尻尾の幻覚が見えた。
「妹はつ……いや、山田紗代。よろしくねっ、少年!」
「あ、あ、はい! よろしくお願いします!」
一瞬『つ……』と言ったのが気になったが、ひとまず置いといて。
一人称は『まい』なのか。変わってるな。
「あっ、紗代の双子の姉。千代です。」
こめかみが長い女性が穏やかに微笑んでそう名乗り、
「千代さん。じゃあ後は…」
と、残っている男性の方に目線を向ける。
まだ名乗っていないのは、この人……優斗? さんだけ。
優斗さんは、まだ相変わらず、ボーっと、無表情のまま池を見つめていた。
「あの……」
「………………。」
▷ ユウトの返事はない
▽
「初めまして……」
「………………。」
▷ ユウトが話す気配はない
▽
こやつ……強敵だな……!
僕はもはや、そうやって現実逃避するしかなかった。
▷ リクの前に強敵
ユウトが現れた!
▽
「その人は私たちの……いとこの、優斗よ。」
その時、千代さんがそう言った。
千代の方に振り返ると、千代は一度ため息をつく。
「ちょっと……昔、トラウマが……あってね?」
千代さんが目を泳がせながら言う。
僕はなんとなく悟り、あ、そうだったのか、と納得した。
「そう……だったんですね。すみません。」
「い、いえ、大丈夫……と、決めるのは私じゃないけど……言いたいことは、なんとなくわかるから……私が、優斗の言葉を通訳? するわ。」
「ありがとうございます!」
僕はそう言って、千代さんに頭を下げた。
「ゲーム要素…?」
どこが?
「▷が…ゲームぽいなって…。」
まあそんなことは置いといて、今回は自己紹介だけでしたね。
「自己紹介書くだけで1時間くらいかかったの!?」
大変なんですよ。あと優斗が叫んだのは虫がいたからです。
「虫嫌いだよって人はいいね等、よろしくお願いします。」
急だなぁ。虫好きって人はコメントして?




