20 代打に丸投げ☆
済
「はああ……。」
私は、リビングのソファーの上でドラマの台本を眺めていた。
これでも一応事務所に所属した芸能人!
私は学校の勉強と仕事の両立に忙しくはあるが、今は忙しさよりも、楽しさが勝っていた。
「姉さん。」
「……あ、葵! なに?」
弟の葵は、リビングのドアの近くに不安そうな顔をして立っていた。
葵の名は光流だが、私はなんだか、アオイ呼びの方がしっくりくるためそう呼んでいる。
「陸の事なんでけど……」
「ああ、そのことなら、心配しなくて大丈夫。お姉ちゃんが何とかするから」
ニコリ、と正真正銘の笑みを浮かべる。
たった一人の大切な弟だからこそ向けられる笑みだ。
「……そうじゃなくて……」
珍しく視線を泳がせ、言いずらそうしている葵に「じゃあ何?」と聞く。
「陸にあの手紙渡した?」
私は思わず固まった。その言葉を聞いた瞬間、「しまった」と思ってしまった。
「……完全に忘れていた。」
そう、誰にも聞こえないようにつぶやいた。
いつもは……というかこの前魔法の事がバレてしまった時には、伝えきれなかったことは手紙に書いて伝えていたのだが、今回は完全に忘れていた。
しかも今回は、伝えきれなかったことはいっぱいあるのに……加えて明日は仕事がある。
だったら……と思い私は代打を立ててみることにした。
「姉さん?」
「観念する。完全に忘れてた。……せっかくだしあの人に、代打を頼んでみることにする。」
台本を読んで前屈みになっていた体をぐいーんと伸ばし、明るい声でそう告げる。
しかし葵は、まだ少し不安のようだ。苦笑いを浮かべ、「あはは……」とつぶやいていた。
「代打って、あの……?」
「心配?」
「うーん、まあ……ね。」
葵は眉を下げて笑みを浮かべた。
「3人で行かせるの?」
「まあ、紹介もかねて3人に行かせてみる? 喧嘩起きそうだけど。あはは。」
「笑ってる場合じゃないよ……。あの二人、なぜか中悪いけど、大丈夫かなぁ……。」
「まあ、あの二人……千代さんと紗代さんが喧嘩になったら、優斗さんが止めてくれるでしょ。」
葵はその言葉を聞いて、我が姉ながら人任せだなぁ……と、本日何度目かの苦笑いを浮かべた。
「だーかーらー、××くんの事を教えろください。」
無理。
「頑固だなぁ…。」
貴様、創成主に逆らうか!
「忘れた? 創成主の創成主は自分なんですけど。」
ぐ…。




