199 チャイムを鳴らしたのは
「はーい。」
そう言って僕は、玄関を開けた――。
「こんばんは。」
玄関を開けた先に居たのは、僕よりも身長は低い。中学生くらいで……声からして、女の子。
……なんとなくだけど、彩華さんではないな。
黒いパーカーにフードをかぶっており、夏休み中の今では熱いであろう恰好をしていた。
「あの……?――」
「――ぶしつけに申し訳ありません。一つお尋ねしても?」
女の子は下を向いたまま被せ気味に言った。
僕は不思議に思いつつも、どうぞ……と返してしまった。
すると女の子はゆっくり、顔をあげた。
いや、本当のことを言うとゆっくりじゃない。ゆっくりに見えるだけ。
フードと前髪の影が彼女の目にかかり、彼女の金色の目が、怪しく光っていた。
「お兄ちゃん――いますよね?」
――お兄ちゃん……いますよね?
「……え? だれの事?」
「とぼけないでください!」
少女はまたもや被せ気味に陸に言った。
そのまま玄関に置いてある靴をバッと指さした。
「あの靴! 兄さんの物です。メーカーも、サイズも同じです!」
「え? そ、それだけで決めつけるの?」
この子の兄がだれか以前に、驚いて聞いただけだった。
すると彼女はさらに顔を険しくする。
「それだけじゃありません! それだけで決めつけるほど私は浅はかではありませんから。メーカー、サイズのほかにも、靴の汚れや紐の結び方まで! 汚れは通学中に水たまりを踏んでついたものですし、結び方は独特で、一目で分かります。」
僕はすごい顔でにらまれ、指を指されていることに驚き、銃を向けられているときと同じように両手をあげている。
この子マジか……。兄の靴紐の結び方まで覚えてるの? こわ~……ん?
「さあ、つべこべ言わず出してください。返してください、兄さんを。」
「………………。」
「さあ! 早く! ……さもないと――」
僕は下を向いて黙った時、相手はしびれを切らしたように何かを出そうとした――その時。
「……ッ愛莉!」
後ろから、佐藤の声が聞こえた。
愛莉? やっぱりこの子が。
この子と暮らしてる? そりゃ逃げ出したくもなるよな。
今この子は、何を出して僕に何をしようとしていたんだろう。
怖い。……怖い? どこがだ?
相手はどうせ一人だし、ガキで、しかも女。
――やれる――
無意識に、愛莉の胸ぐらを右手でつかんでいて――。
左手を、殴るときと同じように、肩と同じ位置まで引いていた。
今にも殴られそう――その時相手は、口を三日月形に歪めていた。
「陸! 避けて!」
「えっ? ――グッ!」
腹を、蹴られた。
重力に従って落ちていく時に見た愛莉の顔は――笑っていた。
――彼女がやったんだ。
――ドサッ
と音を立てて、地面に崩れ落ちる。
懐かしいなぁ。お腹を蹴られたのは、いじめられていた時ぶりかなぁ。
「カハッ、エホッゴホッ、ゴホッ! ヒュー、ヒュー。」
ちょっと待って? 今僕は何をしようとした?
殴ろうとしていた。なんで? どうしてそんな思考に辿り着くの?
ガキ? どうせ僕と歳なんて一、二歳しか変わらないじゃないか! ……どうして?
地面に崩れ落ちた僕に、愛莉は包丁の刃を突き立てた。
さっき出そうとしていたのは包丁だったんだ。
愛莉はスッと、包丁を持たない手を佐藤の方へ伸ばした。
「さあ兄さん、お家に帰りましょう。じゃなきゃ――この人死にますよ。」
噓偽りのない、まっすぐな言葉に、佐藤は混乱していた。
(自分の狂気がばれたから、こいつは――隠す気なく動いて来た!)
どうすれば……!
いやー、愛莉ちゃんやっぱ怖いね。ね、作者!
作「う、うん……。」
作者? ちゃんと話に集中してよ。
作「そんなこと言われても……。後ろで白銀ノ聖桃蝶とナレーターさんがガムテープグルグル巻きになってる中で会話なんてできないよ。」
そう?
ナ「むぐぐー!」
白「むぐぐぐー!!」(たすけて)
ああ……(一瞬見)そうだね(すぐそらし)
ナ「むっ、むむむんむ!」(ふざけんな)
彼らはネタバレ防止のためにね。いや、一人はとばっちりだけど。どっちかしかグルグルにしなかったらネタバレになるでしょ? 両方とも被害に遭ってもらってカモフラージュしないとね(笑)
ナ「〇ぐ! むぐぐぐむむ!」(〇ね! 人でなし!)
(無言で見つめる)……でもまあ、減るもんないでしょ(笑)