197 哺乳派の告白
「それで、なんの打ち上げなんですか?」
あの後僕はとりあえずみんなを中に入れた。
そして今、筮さんに小声でずっと気になっていたことを聞いていた。
「ああ、七不思議に会って無事帰ってこられたことと、石を一つゲットしたことの打ち上げよ。」
「そ、そうなんですね。でもなんでうちで……。」
「だって親がいないと思ったんだもん。」
「確かに……。」
確かにうちの親は二人ともめったにうちに帰ってこない。
怪異の事で打ち上げをするなら、うちが最適だろう。
だが不運にも、うちの親は帰ってきてしまった。
「ついてないですね。」
「そんなこと分かってる。」
筮さんは大きくため息をついて、頭痛を押さえるように頭を押さえた。
「とりあえず、今日集まったのは江見ちゃんの誕生日って事にしましょう。」
「え? なんで桜さんなんですか? 他の人でも……。」
「それじゃダメなの。」
筮は明確に否定した。
その声には、小声ながらも有無を言わせぬ迫力があった。
筮が絶対に譲れない理由。相手は媿野家当主。ここにいる人物の事も調べられている可能性がある!
だから、最近で会ったばかりの桜子であれば、誕生日を知られている可能性は低い!
でもそんなこと、言えるわけもなく……。
「何の話?」
とその時、父さんが台所に顔を出した。
僕は驚いたが、平然を装って「何?」と聞いた。
「せっかく仕事が片付いて、家に帰ってこれたから、ビールでも飲もうかなと思って。」
「え。」
父さんが台所に来た理由を聞いて、え、と声を漏らしたのは、筮さんだ。
筮さんの反応に、父さんは少し眉をひそめてふにゃりと口角をあげる。つまり、笑顔がぎこちないのだ。
「………………何です?」
「いえ……成人していたんだなと。」
父さんの質問に筮さんは口元を押さえてそっぽを向いて答えていた。
「成人してなきゃ中学生の子供がいるのは犯罪ですよ。どうです? あなたも飲みますか? お子さん四歳のようですし。どんだけ早く産もうと二十歳にはなってるでしょう。そうでなきゃあなたこそ犯罪になってしまう。」
「う……。ありがとうございます。ですが私は、ビールは好きではなくて……。」
「あ、もしかしてまだ……。」
視線を泳がせて答える筮さんに、父さんは何か言いかけたが、途中で言葉を濁す。
「その……セクハラと言われるかもしれませんが、授乳中ですか? それか養子?」
「違いますよ! ……私は哺乳派です! し! それに……あの子は養子です。」
筮さんは顔を真っ赤にして答えていた。
その返事に父さんは眉を下げて残念そうに言った。
「そうですか……久しぶりに誰かと飲みたい気分だったのですが、それは仕方ない。――あ、ビール受け取り忘れた。」
「はぁ!?」
受け取り忘れた?
「父さん、どういう事?」
「いやぁごめんごめん。今日は部下の車で連れてきてもらったんだけど、部下はコンビニに用があってね。そこで降りたんだ。その車の中にビールを忘れてしまったらしい。」
じろりと睨むと、父さんは頭の後ろに手をやってあははと笑った。
「仕方ない。車庫に保存してあるワインを取ってくるよ。」
「はぁ……車庫と言ってもうちに車は無いから作り変えて、ワインの保存場所にしたんだっけ?」
「そうそう。でも俺はどちらかというと日本酒派だけどね。凪はワインのが好きだから。」
「母さん……。」
僕は思わずため息をついた。
ふと横を見ると、筮さんが目を輝かせていた。
「筮さん?」
「ワイン……飲ませてもらってもいいですか!?」
父さんの方を見ると……
「うーん……いっぱいあるし、いいよ!」
ナ「ジャンケンしよ。俺パー出すから。」
ん。了解。じゃあ私グー出す。
白「いつもと流れが違う事には突っ込まないんだ。」
作「そうだね。こういう時ってどうして私たちがツッコミ役にまわらなきゃいけないんだろう。」
ナ「いい? 俺はパーを出すんだよ? でも、もしかしたらキキがチョキ出すことを見越してグーを出すかもしれないよ?」
う……私はグーしか出さないから。
ナ「ほんとにいいの? もしかしたら俺がチョキを出すかもしれないよ?」
いいの! 最初はグー、ジャンケンポイ!
ナ(パー)
ほんとにパーだった……。(ちなみに私はちゃんとグーを出したよ)