195 フライパンは熱いの?
「……何ですか? これ。」
桜さんは、僕が作ってるものを見てそうつぶやいた。
「何……って……焼きそばだけど?」
僕は桜さんが焼きそばを知らないことに一瞬驚くが、しばらく考えてからスマホの検索画面を開く。
桜さんはそんな僕の様子を、首をかしげて見ていた。
『焼きそば 日本 誕生 いつ』
と打ち込み、検索をする。
スマホの画面はパッと変わり、1950年頃、と書いてあった。
そうだった。終戦日は1945年だった。
焼きそばの誕生は終戦直後と書いてあるし、桜さんは知らなくて当然か……。
「美味しいですか?」
桜さんは一生懸命ジャンプして焼きそばを見ようとする。
身長何センチだろ。一メートルくらいだよね?
「桜さん、台いる?」
ソファーでくつろいでた兄さんが声をかけてくる。
桜さんは兄さんの方に駆けていき二十五センチから三十センチくらいの小さなイスを持ってきてその上に立った。
桜さんは作り途中の焼きそばを見て目を輝かせる。
そのままそーっと焼きそばに手を伸ばした。
「あっ、桜さん、フライパンは触っちゃだめですよ。」
「え? あっち。」
忠告もむなしく、桜さんはフライパンに触れたが、反応は意外と軽かった。
僕はため息をついて、焼きそばの方に視線を戻した時、ここにいるはずのない人の声がした。
「今すぐ手を水で流すの。」
この特徴的な語尾は――
「彩華さん!?」
僕はバッと振り返って彼女の姿を捕らえる。
彩華さんはリビングの真ん中に仁王立ちしていた。
そのまま台所へと歩き、桜さんの腕を掴む。
「え? でもそんなに痛くないですよ?」
「勘違いするんじゃないの。まだ体が麻痺してるだけなの。一週間もたてば、感覚も生者と同じになるの。」
「そ、そうなんですね。ありがとうございます……。」
桜さんは火傷した手を水で冷やしながら彩華さんにお礼を言った。
「うわ、彩華さんじゃん。どっから来たの? 不法侵入?」
「住居侵入罪……。」
兄さんと僕は桜さんの事よりも彩華さんがどこから入ったのかが気になった。
「ベランダなの。蝶が案内してくれたの。」
「なっ、白銀! 姿が見えないと思ったら~。」
桜さんが目を真ん丸にして蝶を見ている。
すると彩華さんはグッと親指を立てて言った。
「住居特定・侵入、超楽勝……なの。」
心なしか、ちょっとだけドヤ顔でした。
そして次の日に、首に包丁を向けられ人質になってしまうとは、思いもしなかった。
ナ「麻痺してただけだったんだ……。」
ナレーターさんは体が麻痺したことある?
ナ「ない……んじゃないかな? そもそもどうしてなるの?」
知らん。私の頭の中はこの物語の設定でいっぱいだ。そんなことを覚え、いれる容量は残ってない。
作「キキはスマホの容量いっぱいだもんね~。」
作者も同じでしょ? なに自分の事棚に上げてんの? 白銀、スマホの容量は?
白「私の時代スマホ無いから。」