187 五番の観察主義 章終わり
「そういえば、明日は卵が安い日なんやった。」
ふと、五番がそんなことを言い出した。
七番は、少し不思議そうな声で言う。
「お前、卵アレルギーじゃなかったのか?」
「……よう覚えとったな。って、何年前の話や。……せやで。卵は食べれへん。この学校の生徒さんが言っとったんや。名前は確か……中等部三年『タチバナ』やな。」
たんたんと語る五番に、七番は呆れる。
「はぁ……相変わらずだな。どうしてわざわざ学校内に出ていくんだ? 桜も一番も旧三番も、生徒の観察をしているなんて聞いたことないぞ?」
桜、とは六番の江見さんの事だ。忘れていただろうが、江見さんの下の名前は桜子である。
それに、と七番は付け加える。
「誰もお前の存在に気づくわけではないのだろう? むなしくならないか?」
「なるで。」
即答した五番に、七番は思わず「え」と声を出す。
「でも楽しいやんか。生徒の中には――絶対に近づけさせてもらえへんやつも居る。」
五番は目を伏せ、その生徒と教員を思い出す。
「祓い屋の家系で近づくと俺が痛い思いするやつも居る。」
最後に――
そう付け加え、五番は目を開く。
目に少しかかる前髪から覗く、黒い目は、真剣だった。
「得体の知れへんやつも――居るんや。」
その生徒を見たとき、五番は眉を顰め、目を疑った。
そんな行動をとったのは、何年ぶりだったろうか。
明らかに、その者の空気が周りと違ったから。
(ありゃ目立つで。絶対変なもんに目ぇ付けられとる。)
『理科室遠いね~。』
『お前が忘れ物をするからでしょう。』
『俺のせいにするつもりか?』
『ま、まあまあ二人とも……。』
本人は、気づいていなさそうだったが。
(虫も殺さぬ顔をして、よくもまあそんなに怨霊つけて歩けるなぁ。)
その生徒は、いくつもの怨霊に掴まれていた。
五番はその時、パッと目を反らした。その中にいる怨霊の一人と、目が合ったから。
(その隣に居る二人もいくつか怨霊つけとるし、いまさら何をしても焼け石に水やな。)
「まっ、そんなより取り見取りの生徒たちの観察をするのは楽しいで。なぁ? 清華もそう思うやろ?」
五番に話を振られた清華は、驚きもせずに一歩前へ出た。
「……五番、悪趣味。」
場の空気が凍る。
心なしか七番には場が凍る音がした。
彩華は、
(よく言った清華!)
と目を輝かせる。
「はぁ? 七番様、こいつも頭おかしなってしもうてるで。いくらカタコトでしか喋れへんかったとしても、悪趣味は言い過ぎや。ほんま悪趣味やで。お前がな! ハッ!」
「どこがなの。そして笑うんじゃないの。自分が悪趣味と認めるべきなの。この変態。」
「ゔ! 巨大ブーメラン……。ていうか! 人を変態呼ばわりするなや!」
「悪霊。怨霊。成仏待ったなしなの。」
「なんやてーーー!!!」
七番は冷や汗が止まらない状態で二人を見ていた。
そして、ほんの少し清華を恨む。
その時、外から五番のハトが飛んできた。
名前はアルバトロス。
アルバトロスの目が、大変ですね七番様、と物語っていた。
後書き書くの疲れた。
だからオマケあげる。
〖七不思議五番 ”悪趣味”と言われた時の反応の違い〗
~清華の場合~(今回は彩華のせいでキレ気味だったためあの反応だった)
清華「悪趣味」
五番「……清華くん……どこでそんな言葉覚えてきたんや。お兄ちゃんはずっと無垢なままでいてほしかったわ……(泣)」
~彩華の場合~
彩華「五番、悪趣味なの」
五番「はぁ!? お前の方がバリバリにアホやんけ!!」
彩華「はぁ!!?」
そして七番様が止めに入る―― ※その後にアルバトロスが憐れむ
~七番様の場合~
七番「五番……いや……その……悪趣味じゃないか?」
五番「うーん。やっぱそうなんやろか……。でもまあ、暇つぶしやし……スカート覗くわけじゃないんやから……(苦笑い)」
~六番、江見桜子の場合~
六番「その……こんなこと言いたくないんですけど、悪趣味……の、ような気もしなくもないかと……」
五番「…………そりゃそやろな! 俺かてちょっとくらい自覚あるわ!(泣)」