186 ふすまの向こう
すみません。あと一話だけ続きそうです。でも短くなるか長くなるかするかも。必ず次で終わらせます。
意外と千文字って少ない。
「せやねん! 江見ばっかりズルいなぁおもて、ちょっかいかけに行こうか迷ったんやけど、やっぱやめにしたんよ。」
「なんでだ? 珍しい。」
数分間、ここのふすまを開けられないでいる……。
ここのふすまを開けるのには相当な勇気が必要であるという事は、考えなくても分かる事だ。
現在、彩華の心臓がバクバクバクバクバクと高速で鳴っている。
もちろん、彩華は七番によりつくられた存在であるため、心臓の音が早いこともバレている。
(病気か……?)
と、七番に心配されるほど。
「もー七番様ホンマに聞いとる!?」
「聞いてる聞いてる。」
「その場に行こうと思た瞬間に彩華に睨まれるからやっぱ見るだけにしたんよ。」
七番は先ほどから相づちしか打てていない。
なぜなら、ふすま越しに彩華の殺気が漏れ出ているからである。
先ほどから七番は五番に「もうそのへんにしておいた方がいいんじゃないか?」と言っているが五番の愚痴は止まらない。
「せやから! 彩華の圧をどうにか――」
どうにかしてほしい、と言いかけたとき、彩華もついに限界が来た。
彩華はふすまを破って中に入ろうとしたその瞬間――
「いい加減にしろ。五番。」
七番が、声をあげた。
声をあげたとき、異世界の雰囲気も一気に変わる。
空は暗くなり、星や月すら見当たらない、ただの闇に変わる。
ランタンは暖色から血のように鮮やかな赤に変わる。
純白の巫女装束が、光にあてられ赤に縁どられる。
冷たい風が、彩華の頬を撫でた。
七不思議で最も強い、七番様がお怒りだ。
彩華が思うのは、七番の記憶にある、地獄絵図。
すべてが、赤かった。
そんな中で、一つの影が影を襲った。
必死に命乞いする男の影の前に、記憶の持ち主の影は見下ろすように立っていた。
そんな、地獄のような記憶。
――たとえその地獄を作ったのが、自分であっても。
「彩華。」
いきなり呼ばれたことに驚き、彩華の肩がビクッと跳ねる。
彩華は、ゆっくりふすまを開けた。
「な、なんでしょう七番様……なの。」
「彩華ーーーッッ!!!?」
和風建築のこの異世界に似合わない、タキシードにシルクハットをかぶった色黒の少年。
その少年の前で静かに茶をすする着物の男が、七番様。
だが顔は見えない。なぜならこの男は、顔に布を付けている。そこには、『漆』と書いてあった。
そして七番様の後ろに、無表情で置物のように静かに立つのが清華。
「い、いつから……いつからそこに居ったん!?」
「結構前……なの。」
「盗み聞きして楽しかった!? 変態!」
プチ、という、彩華のキレる音がした。
「だ……だ、誰が……誰が変態なのーーーー!!!」
いつの間にか、空の色は戻っていた。
ナ「叫ぶ気持ち、わかるわ~。」
何言ってんの? ナレーターさんはどちらかというと五番側。知り合いをキレさせてしまう性格でしょ?
白「五番くん面白いね~。その分七番様が手ぇ焼いてる感じはするけど。」
……(静かにガムテープを取り出すキキ)
作「キキそのガムテープで何するつもり?」
余計なこと(ネタバレ)を言うようならすぐさまガムテープでぐるぐる巻きの包帯女にしてやる。
ナ「そういえば五番くん、安くなった卵買いに行くのかな?」
いやーどうでしょう。彼、卵アレルギーですからねぇ。
ナ「じゃあどっから仕入れてきたのその情報!」
……(静かにガムテープを構えるキキ)
※ちなみに七番様は蕎麦が食べられません。(彩華と清華も)それとは別にトマトも苦手です。トラウマがあるとかなんとか。