185 五番の無自覚芸
「ただいま戻りました……なの。」
彩華は、七不思議・七番の異世界に足を踏み入れる。
この語尾はいつまでたっても治らないが、今となっては彩華も治すことはあきらめている。
(……ん? 七番様と、誰か話してる?)
彩華は、ちゃんと心の中では、語尾なく喋れるのに……と思うだけ無駄だと思い始めていた。
『………………! …………。』
『…………。……………………。』
『……………。』
壁越しに聞こえる声では、会話の内容までは聞き取れない。
木造建築の異世界。その外廊下を歩いていると、七番ともう一人の声が聞こえてきた。
外には綺麗に整えられた庭がある。
空は蜂蜜のような鮮やかな色をしている。
だがそれでは明るさが足りず、庭にも建物にもあちこちにランタンがつるされており、全体的に暖色で構成されている。
もともと異世界は、持ち主の性格を表す鏡のようなものである。
持ち主が育った環境なども異世界には影響する。
強ければ強いほど、異世界をおのれの性格から離れた見た目にすることはできる。
話がそれた。彩華は、声がする方へと歩いていき、目的の部屋の前で泊まる。
ふすまに手をかけ、戸を開――こうとして、手を止める。
「せやから、彩華の目つきと圧をどうにかしてって――あ。」
話し相手はどうやら、五番だったらしい。
どうやら二人は、彩華の圧について話していたらしいが、急に話すのをやめたので彩華は少し驚く。
(気配に気づかれた!? いや、この空間で七番様以外が気配を感知することは不可能のはず……!)
彩華は、一瞬眉をひそめた。
が――
「なんや清華やん。驚かさんといて。一瞬彩華かと思ってしもたわ。」
(誰が気軽に『彩華』と呼んでいいと言いましたか……!)
彩華は、キレていた。
そこで、唯一彩華の存在に気付いている七番が声をあげた。
「あー五番。その辺にした方がいいんじゃないか……?」
それからしばらく沈黙が流れ、五番が「せやね! 万が一聞かれとったら大変なことになるわ」と納得したため――その最後の一言で彩華は完全にキレた。
五番は彩華だけでなく、最近消えてしまった旧三番、二番の花子さんや四番も同じようにキレさせたことがある。
もちろん、六・江見さんも同じようにキレたことがあるが、能力ぶっ放して五番をボコボコにした後、さすがにマズいと止めに入った七番のおかげで仲直りした。
そのおかげで今は七番に「喧嘩するほど……仲が……いい?」と言われてる良好(?)な関係になっている。
後書き書くの……疲れた……。