180 死者の疑問
今日、私の目の前で、人が轢かれた。
私は悲しい。
目の前で人が死んでしまう事が。
報われないと、私は思う。
かわいそうだ。
一番最初に浮かんだのは、そんな憐みの言葉だった。
ああ、結局私は死者なんだな、と実感させられた。
死者は、人の死に無頓着だ。
私は死に無頓着なの?
……わからない。何も。
『お前は結局、何がしたいんだ?』
『……え?』
七番様の問いに、私は答えることができなかった。
今なら、答えることができます七番様!
私は、私のように死んでしまう人を救いたい!
怪異にそれができるのか、そんな疑問もありました。
そもそも私は、この学校から出られない。
助けることもできないの。
――でも、名前も知らない人間の事なんて、助ける必要ないんじゃない?
……それは、そう。
私は怪異で、どうしてもそんな疑問が浮かんでしまう。
――私はっ……怪異になんかなりたくなかったッ!
……それは違う。
私はここで、色んな怪異にあった。生意気なやつももちろんいた。
学校の外で消えていくのを、じっと眺める事しかできずに消えてしまった怪異もいた。
その時私は、隣で飛ぶ蝶と一緒に怪異を見下ろしていた。
私は、怪異が消えるそれを見てどう思った?
……私は、問う事しかできないのか!
疑問を持ってる間に、消えかけてる命がある。
迷ってる暇はない! たとえ、一世一代のものだったとしても、怪異らしくなくとも――
――自分らしくを貫き通す!
七番様はきっと、許してくれるから。
「どうにかして、助けたい……!」
私は、ふと近くを飛ぶ蝶を見た。
「助けて、蝶々さん……! 力を貸してほしいんです!」
必死に頼んでも、蝶が聞く気配はない。
駄々をこねる子供を見る、大人のようにこっちを呆れた目で見下ろされている気さえした。
「やっぱり、名前を呼ばないと……。」
ちょうちょさんの名前は……――
『はうぎん? とかいういおっぽい!』
『白銀な。そうか……いいかもしれないな。………………。』
『う?』
あの時七番様は、蝶を眺めた後に何と言っていた?
ああ、そうだ――。
『聖桃蝶……。』
『……せーとーちょー? あ、はうぎんのせーとーちょー!』
その一言で、蝶の名は決まった。
視界がぼやけて、一滴の涙がこぼれた。
「助けて……!」
私は覚悟を決め、口をギュッと結び、手をバッと伸ばした。
その腕は相変わらず、女児の細い腕だった。
「白銀ノ、聖桃蝶!!」
その時、蝶がパァッと光り、ひき逃げに遭った少年の上まで飛んで行った。
一瞬で、時間が止まったような静寂が、周囲を包んだ。
そして蝶は、人間の女性の姿に変わった。
女性はとても神々しく、着物を着ていて、白から黒に変わる不思議な髪を持っていた。
蝶の時と同じく薄く白い光を放っており、周りの音が聞こえないような気がして、女性に目を奪われた。
にっこりとほほ笑み、女性は佐藤に触れた。
すると佐藤の傷は癒え、道路に広がっていた血は消えた。
まるで、寝ているようだ。
女性はもう一度光り、蝶の姿に戻った。
誰も口がきけないほど、その場の空気は張り詰めていた。
そして江見はしばらく黙ったのち、泣き出した。
「うわあぁぁぁん! よかった。よかったよぉ!」
佐藤以外のみんなは、江見の意外な能力に、驚いているようだった。
一方で江見には少しずつ、黒い煙が上がり始めていた。
白「白銀ノ、聖桃蝶……って、私の名前じゃん!」
そうです。蝶が変身したあの姿は、白銀のものです。
白「だから自己紹介させてくれなかったの!?」
そんな事より、私この物語に登場する『偏愛、狂愛者リスト』作ろうと思ってて――
ナ「ハイハイ! その中に絶対愛莉ちゃん入ってる!」(そして俺も入っていそうだ……)
ナレちゃん正解!(色んな意味で) イラストが完成し次第、挿絵として後書きにのせようと思ってます!
作「何人描くの?」
えーっと、1、2……4人かな? 無自覚で一人。あともう一人くらいいたはずなんだけど、パッと思い浮かばない……。